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大事な人を生んでくれた人へ・・・

「ここ? かなたのお母さんのお墓?」
「ああ・・・そうだよ・・・」
「・・・うん、おばあちゃんのお墓がある場所と似てるし・・・素敵だね?」
「・・・ああ、俺も、好きだ、だから、母さんをここに埋葬できてよかったって思ったよ」

みゆの祖母の墓参りの翌日は、かなたの母親・・・瞳の墓へと参りに来ていた
かなたの母の墓は、お寺の山の中だった
そこは、緑いっぱいで銀杏や紅葉、かえで、ポプラなんかの木々が生え、さわさわ風を送り、木漏れ日を作っている

「かなたのお母さんって、美人さんなんだろうね?」
「ん?」
「だって、かなたと似ているんでしょう?」
「ああ、まあ・・・」
「絶対美人だよ~、だって、かなたも、美人だもん」
「おい・・・男に美人って・・・」
「だって、そうだも~ん、大学行ったら、女の子の生徒にひっつかれるもん~、あたし、嫉妬しちゃったんだから~・・・む~・・・かなたの顔大好きだけど、複雑~・・・
あたしだけ、知っていればいいのに~」
「! へ~・・・嫉妬したんだ?」
「!」
「みゆだけ知ってればね? ・・・問題無いだろう? あんなの作った俺じゃん」
「・・・」
「作って無い俺知ってんのは、お前だけだろう?」
「!」
「素顔見ても、幻滅しないって保障無いんだからな」
「・・・」
「みゆは、俺知っても、そうやっていてくれるんだ・・・母さんも、みゆならきっと受け入れてくれるよ・・・そうだろう? 母さん?」
「! かなた・・・」
「・・・絶対目一杯、こいつと幸せになるからな? 母さんの分も・・・母さんが、俺にくれたもの、忘れない・・・ホットミルクの作り方や人への思いやりや・・・着物の着付けも・・・忘れないから、絶対・・・死んだ瞬間受けれる事が出来なかった俺だけど・・・受け止めて、前を向いて、こいつと生きて行くから・・・」
「・・・」
「・・・俺を生んでくれて・・・俺を愛してくれて・・・俺に色々教えてくれて、ありがとう・・・母さん・・・」
「あたしからも・・・かなたを生んで下さって・・・愛して下さって、守って下さって、かなたの元へ導いて下さってありがとうございます。絶対、かなたの笑顔や安心できる場所守ります、かなたが、帰ってきたいって場所作ります」
「・・・こんないい子な優しい子・・・そうそういないだろう? 母さん、俺この子を愛してるんだ、結婚も、子供も、こいつ以外考えられないんだ・・・だから、どうか・・・
心配掛けたりするだろうけど、見守っていて欲しい・・・頼り無い感じで悪いけど」
「・・・頼りなくないよ?」
「みゆ・・・」
「・・・支え合おうね? 支え合って助け合っていこうね? 一緒にね?」
「ああ・・・約束だ・・・」

かなたの母にも、みゆは、白い薔薇と・・・ピンクの薔薇をたむける
かなたに聞き、一番好きな色を選んだのだ

「・・・また来ます、その時は・・・」
「孫もな?」
「うん・・・絶対だね、結婚の後もね?」
「ああ・・・絶対な」

みゆが、背伸びをする
かなたが、屈み

そんなかなたの顔に・・・頬に、鼻・・・目尻やおでこはさすがに届かず
「む~・・・」
「しょうがない・・・後でして?」
「! うん・・・」

唇へ・・・誓う様に、重なる

「はあ・・・好き、好き、大好き・・・あなたの息子さん、貰っちゃいます」
「って・・・俺の方じゃねぇ? それは・・・」
「ん? ふふふ、違わないよ~、だって瞳さんから、奪っちゃった感じだもん、だから、合ってるんだよ?」
「! ったくも・・・」



かなたの顔は、破損してしまう
みゆのお尻に、腕を通し、持ち上げ
背中に腕を回し

抱きかかえ抱きしめる


木漏れ日の中、重なる影に


・・・お幸せに・・・
みゆちゃん、かなた・・・どうか、いつまでも、仲良しでいてね?

こんなに、見せつけるんだから

絶対、幸せにならないと許さないわよ?

みゆちゃん・・・かなたをお願いね?

大事な息子を、どうか・・・よろしくおねがいします・・・

私は、あなたのおばあさんと一緒に、見守るわ・・・

あなた達が、何時までも・・・そうあるように

何時までも・・・



木々を通る風の中で、優しく囁く声が
聞こえた気がした・・・


続く

更新日:2013-09-23 14:52:41

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