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思い出の場所

夏休みが明けて秋になり、大学が始まった。

「テミン、そろそろ起きないと遅刻するぞ。」

これ以上寝ていたら、また1限に間に合わない。
そう思ってミノが広いベッドに一人で眠っているテミンを起こすけれど。

「行きたくない…」

布団の中で、テミンはそう弱く声を出す。

「なら大学はいいから、ジョンヒョンさんのとこまで頑張ろう。な?」

優しく頭を撫でながらミノがそう言っても、テミンは何の反応も見せずに布団に潜ったまま。
そんな様子を見て、ミノは仕方なくテミンを抱き起こした。

「おはよう。」

「…おはよ」

顔を逸らしながら、小さな声でテミンが答える。

夏休み明けに大学に行き始めてから、急に元気がなくなって。
授業が始まって2週間ほど経つのに、テミンはまだ3日しか大学に行っていない。

単位がどうこうとか、そんなことはどうでもいいのだけれど。
朝は笑顔が見れないから、特に心配になる。

「今日は何食べようか。ん?」

優しい声でそう聞くと。

「ヒョン…」

ミノの背中に手を回して、強く抱き締めようとする。

どうして大学に行きたがらないのか。
急に元気を失くしてしまったのか。

分からないけれど、とりあえずテミンをジョンヒョンのところへ送り届けなければ。
そう思い、ミノはテミンを促してベッドから降りた。


カフェへ行くと、「今日も休んだの?」とジョンヒョン。
テミンは小さく頷いて、窓際の指定席ではなくカウンターの席に座った。

「秋は行きたくなくなるよなー。そういうもんだよ。」

時々適当にも聞こえるジョンヒョンの発言にミノは少し呆れている。

「そういうもんなんですか?」

「そうそう。人恋しくなるし。なー、テミナ。」

カウンターの中から手を伸ばし、テミンの柔らかい髪を撫でる。
とりあえずここに来ればひと安心だと、ミノは仕事に行ってしまった。

「なぁ、テミン。今日は自分で淹れてみるか?」

いつも飲んでいるミルクティーのカップを掲げ、ジョンヒョンが聞いてみる。
少しためらっていたけれど、テミンは頷いてカウンターの中に入ってきた。


更新日:2014-02-05 01:06:23

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