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記憶~入部~


「天文部ぅ!?」


カイが机を勢いよくたたいて立ち上がった。


「声が大きいわ、このバカ!!!」


俺は反射的にカイの頭をたたくと、カイはあっけにとられたように座った。


「いやぁ、だってさ、ソラがだぜ?
 あの『死の川』と呼ばれるソラがだぜ?
 そのソラが天文部なんぞ…」


『死の川』とか言うな。


俺は内心でツッコんだが、めんどくさいので声には出さない。


「つうか、まだ入るとは言ってねぇだろ。
 誘われただけだよ」


すると、カイは「いやいやいや」と首を横に振った。


「ソラ部活やってないじゃん。
 入れよ、天文部」


至極真面目な顔でカイが言うので、俺はむっとする。

確かに部活はやっていないが、そう真顔で言われると、傷付く。


「別にいいだろ、帰宅部でも」


「いいや、だめだね」


即答される。

コイツはたまに訳が分からない。


「だってさ、俺は野球部入ってて、ソラが帰宅部だと一緒に帰れないけど、
ソラが部活入ってたら時間帯一緒になって帰れるじゃん!」


あぁ、そういうことか。

つーか、お前はいつも一人で帰ってる俺のことをかわいそうだと思ってたのか?

あとで訊いてみよう。


「ま、どーにかする」


「おう!そーしろ」


俺はカイにぷらぷらと手を振ると、教室を出た。

更新日:2013-07-24 12:57:06

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