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第9話 VSマチス(後編)

【クチバシティ サント・アンヌ号甲板】



「……以上がサムライの魂じゃ」


 俺はサント・アンヌ号の船長であるクソジジイから、秘伝技『いあいぎり』と共にサムライの魂なるものを学んでいた。


 とにかく、国の為に尽くす義というものをものすごく大切にしているやつらだということは分かったが、バトルで役に立つのかはさっぱり分からん。


 まぁ、一応次のジム戦の参考にはしてみるが。


「少年のニャースの『いあいぎり』もなかなか様になってきた……それになにより主人の命令には絶対に従うという忠義の心……まさしくサムライのものじゃな」


「いや、それは違うな」


 俺はクソジジイの言葉をキッパリと否定した。自分のポケモンを褒められて悪い気はしないが……俺はボーッと何もないところ向いているニャースを見て思う。


 こいつは、まだ俺に心を開いてくれてはいない。


「確かに俺の指示を忠実に聞くし、一番使いやすいポケモンなのかもしれん。だが、トレーナーとポケモンの関係は主君とサムライとは逆だ。ポケモンを従わせるのがトレーナーなんじゃない。ポケモンに尽くすのがトレーナーだからな。


ただ、もしもポケモンが自分の意思でトレーナーに尽くしてくれるのなら、これほど嬉しいことはないがな」


「……君はまだ若いのにいろいろ考えとるんじゃのぅ」


「クソジジイがボケてて何も考えてないだけだろ」


「わし、お前の師匠なんじゃが!? 本来秘伝の技であるはずの『いあいぎり』を特別に教えてやったのは誰だと」


「さて飲み物でも買ってくるか!」


「話くらい聞け!!」


 クソジジイの戯言は無視して、俺は自動販売機へと足を運ぶ。『いあいぎり』習得のための訓練で疲れてるから甘いやつがいいな……よし、ミックスオレにしよう。


 俺は自動販売機に小銭を入れて、ミックスオレを2本買うと元いた場所に戻る。


「おーい、ミックスオレ買ってきたぞ」


「おぉ、気が利くのぅ……どれ弟子と一杯やるというのも」


「ほら、ニャース。ミックスオレだぞ」


「わしのじゃないのっ!?」


 よく喚くな、このクソジジイ。俺はミックスオレの缶を開けてニャースに手渡す。ニャースはじっと缶を見つめていたが、しばらくしてからペロペロとミックスオレを飲み始めた。


 その様子を見て俺は満足げな笑みを浮かべると、ミックスオレを一気飲みした。


「ロケット団には『ポケモンは道具だ』なんていう先輩がいるけど、こうして一緒に同じミックスオレを飲めるんだから、全然そんなことないよな」


 その時のニャースの表情は心なしか穏やかに見えた。


更新日:2014-01-02 23:57:12

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