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あたしは



どれだけ拭っても一向に止まらない雫が気持ち悪い。

こんなの今までのあたしじゃない。
いつもだったら笑って誤魔化すのに。

ゆっくりとリョーヘイが近寄ってくる。


「…来ないでよ。
 ……見ないでよっ!!」


そう言って手を振り回すと、リョーヘイの身体が少しこわばったような気がした。

きっとこれ以上近づかれたら傷つけてしまう。
あたしの一言で、リョーヘイはあたしから離れて行ってしまう。


怖いんだ。


あたしは独りになることが怖いんだ。

やっと友達ができたのに、失うことが怖くて、
強気なふりをして、結局相手を傷つけてしまうんだ。


「…あたしと関わるとろくなことないよ。
 ……もう、ほっといてよ…」


リョーヘイが小さくため息をついた。



「だから、俺はそんなにヤワじゃねぇって。
 つーか、傷ついたって治せばいいことだろ?
 俺にはお前がいるし、お前には俺がいる」



そう言って、優しくあたしの頭を撫でた。

温もりが伝わる。

それに安心して、また涙がこぼれた。



「…それで、いいだろ?」



優しい声で問われて、あたしはゆっくりと、静かにうなずいた。



「…うん」



きっとこの世界にあたしの居場所なんかなくて、
ずっと独りなんだって思ってた。

それでも誰かがあたしを受け入れてくれるなら、
あたしはきっと、その誰かを頼るだろう。

温もりを求めて、
愛を求めて、
友を求めて。


それが君だったから、
あたしはゆっくりと、それでも確実に頼ることができた。



今なら、この憎い世界を……




愛せそうだよ。


更新日:2013-07-14 15:36:09

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