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解かれた真実、裏切られた悪夢

 エーデリア編の前後には、不可解な出来事が多く存在していた。
 そのうちの一つである、エイディ=ヴァンスとフリードの両名がトルーレンの玄関口に出現した謎の真相は、まだ語られていない。
 いや、トルーレンに現れたこと自体は、“魔女”の力を狙ってのことだったのだろう。
 しかしどうして彼らはゼンカとキリムを一度追い越し、すれ違うような形でそこに現れたのか。その理由は、ゼンカたちの憶測だけでは遠く及ばないところにあった。
 ……それは、トルーレン編の数日前のこと。

「何処行くんだよ、エイディ。」
「古い友人に会いに行くだけだ。お前はエーデリアで、トルーレン襲撃の準備でもしていろ。」
「古い友人? ……また、いつもの隠し事か。」
「…………。」

 フリードとエイディの姿は、交易都市エーデリアの郊外にあった。
 彼らはゼンカとキリムの追跡を諦めていたが、帝都には帰らず、先回りしてエーデリアの地を踏んでいた。
 エイディに、どうしても無視できない“用事”があるらしい。フリードは溜息をつくが、結局無為に足止めはせず、エイディを見送る次第となった。
 だいたいエイディは、いつもこんな感じだ。
 その理由は、彼が帝国軍の正式な軍人ではないから、と言うのもあるだろう。しかし、それにしたっていやに自由奔放すぎる節があったのが、フリードは内心、不満だった。
 同じ帝国軍のエースであると言うだけでなく、対等な友人だと思っているのに……。

「……やれ、やれ……。」

 エイディは、そうは思っていないのかも知れない。一体、アイツは何を考えているのだろう。フリードは答えの出ない疑問を、もう一度深い溜息を漏らすことで全て吐き出して、宿屋へと踵を返すのだった。
 エーデリアは交易都市として非常に発展しているが、その一方で、少し離れただけで人間は誰も立ち入らない深い森が広がっていると言う極端な一面も持っていた。エイディは森に入るや直ぐに、周囲に人間の気配が無いことを警戒しながら悪魔の翼を広げて空へと舞い上がる。
 向かったのは、“人間”は誰も近寄らなくなった、山中の廃屋。

更新日:2009-03-02 16:04:14

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