• 1 / 9 ページ

no title

 その家庭教師先の家は家中がゴミだらけで、僕は勉強場所を確保するのに一苦労した。なにしろ歩くと靴下の裏に新聞の折り込み広告やらお菓子の袋やらが引っ付くのだ。床に乱雑に放置されているレディースコミックを足で移動させ、子供用の勉強机の上に置いてあった汚れた食器類を隣のカオスの山に置いてようやく勉強できる状態になった。毎回この儀式を行なうのに十分はかかった。
 教えていたのは算数だったと思う。なにしろ家の印象の方が強烈で、何を教えていたかなどの些細な部分は忘れてしまった。

更新日:2010-06-19 14:29:22

  • Twitter
  • LINE
  • Facebook