官能小説

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みず狂い いち

ぐあらぐあらと建てつけの悪い引き戸を開け奥のほうへ呼ばわると、はたはたと足音をさせ頭を青々とそりあげた子坊主が満面に喜色を浮かべて玄関口へと駆け出してくる。

夏の別邸近くにある寺の住職の子である。

子坊主を散歩に誘って、日の照りつける地道を歩きだす。

喜びいさんで鹿が跳ねるように歩く子坊主に、東京のアクセントで声をかける。

「いくつになった?」

「十三です」

つられて関東風の発音で答えたのが恥かしかったのか、語尾が消えていく。

若い子に特有のふくふくした肌が、襟もとからのぞく。

日差しのせいかうっすらと赤くなった首すじが、まるで女のようだった。

いや、その辺の女より、ずっと美しい肌をしている、と思った。

「十三か」

そう言って手をとり、我知らずのうちに手の甲に唇をつけていた。

その手は女のように華奢で、裕福な家の子らしく手指はやわらかかった。

子坊主は、嫌がるふうでもなく恥かしそうにしていた。

その様子を見ると、からかってやりたくなった。

ゆっくりと手を広げさせ、人差し指を口に含む。

子どもなりになにかを感じたのか、ぴくりと反応したのが可笑しかった。

うぶな女にそっくりだった。

舌を使って指をなめてやると、身を硬くして何かを懸命にこらえているのが見てとれた。

うなじをひと筋の汗がつたい、背中のほうへと流れ落ちていくのに魅入られた。

汗のあとを唇で追っていきたい衝動にかられた。

背中の肌理を、皮膚で感じてみたくなったのだ。

そして、次の瞬間悟った。

「この子を、自分のものにしなければならない」と。

更新日:2013-10-27 20:29:24

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