官能小説

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水ぐるい よん

お兄さんは、私を床几の端に座らせました。

そして、そのまま横になるよう優しく肩を押されました。

私は、真下から空を見あげるようなかたちで床几のうえに寝そべりました。

足は、貴船川の川面へとだらりと力なくたれさがっております。

ずっと憧れてきた、お兄さん。

私は仰向けによこたわったまま、お兄さんがなにかされるのを待ちました。

お兄さんは、川のなかに立ったまま、ぬれてはりつく私の着物の前をお開けになりました。

べとべとして気持ちの悪かった肌に山の空気があたり、恥かしいのを一瞬忘れました。

お兄さんは、川底にひざをつくと、愛おしそうに私のももをなでられました。

私は恥かしくて恥ずかしくて、決してお兄さんのほうを見ないようにして、枝々のすき間からのぞく空を見つめていました。

お兄さんの大きな手が、私の腹をはいました。

大きくたくましく成長されたお兄さん。

頭が良く、東京の大学でも優等だとお聞きするお兄さん。

そのお兄さんが、私にふれてくださっていると思うと、すっかり嬉しくなってしまいました。

しばらくそうしておりますと、あろうことかお兄さんが私の足の分かれ目に口をつけてこられました。

見てはいないので、本当のところはわかりません。

しかし、そうとしか思えませんでした。

お兄さんは、私の不浄なところを口になさっているのです。

私は、起きあがろうとしましたが、そっと押し戻されました。

お兄さんは、断固とした決意を持って、私のそこに口をつけておられるようでした。

床几の板越しに、背中の下を水が流れていく音が聞こえていました。

蝉も、かわらず鳴きつづけていました。

私は抵抗するのをあきらめ、目をつむってお兄さんのなされるがまま、じっとしておりました。

お兄さんは、なにかにとり憑かれたように私のその部分を含味されていました。

相変わらず目はつむったままでしたが、お兄さんが心からそうしたいと思ってされていることが察せられました。

しかし、内心では申しわけない気持ちでいっぱいでした。

私は、心からお兄さんの身を案じました

あまりに長いあいだ、お兄さんがそこを口にしておられたので、息がつまりはしないかと心配になったのです。

お兄さんは、その部分に魅入られておいでのようでした。

その証拠に、いつまでたっても吐き出そうとはされませんでした。

私には、なぜお兄さんがこのようなことを望まれるのか不思議でなりませんでした。

お兄さんにとっては、なんの益もないことのように思われたからです。

しかし、私にとっては至福ともいうべき時でした。

下腹部に、お兄さんの唇や舌や歯を感じました。

お兄さんの唇が、私のその部分を鳥が餌をついばむようになさるたび、膝の裏から汗がしたたり落ちました。

お兄さんの舌が、強く私の皮膚をこするたび、四肢が痙攣したようになりました。

お兄さんが私に笑いかけてくださるたびに拝見しておりました艶々した歯が、私のそんなところにふれているのかと思うと、心の臓が跳ねあがりそうでした。

お兄さんの歯が、かすめるように私の皮膚をこするたび、全身がぶるぶると震えました。

切羽詰まって、私はあがきました。

本当に切羽詰まっていたのです。

「いけません」「なりません」と、何度も叫びました。

私は、お兄さんの頭を足のあいだから離そうとしました。

しかし、お兄さんは大きな手で私の腰をがっしりとつかんで放そうとはされませんでした。

私は、それだけはしてはならないと必至でした。

そのような非礼は、決してお兄さんにしてはらないことです。

私が必死になればなるほど、お兄さんのほうも激しくしてこられます。

しばらくのあいだ、せめぎあいが続きました。

負けるものかと、己の衝動と戦いました。

お兄さんにも、負けるわけにはいきませんでした。

しかし、もちろん負けたのは私でした。

清浄な貴船川に似つかわしくない声が、あたりに響きわたりました。

私の声でした。

私のときの声でした。

がくがくする我が身を、すべてお兄さんに委ねました。

そして、放心しました。

更新日:2013-05-13 15:01:15

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