• 9 / 14 ページ

また明日



『カワイソー。』

『きったなー、こっちくんなよー。』


嘲笑の混じった声が、私の脳裏にしがみついて離れない。


かわいそうだなんて、本当は思ってないくせに。


私は自分の足元を見ながらそう思った。

泥で汚れた上靴。
悪口でいっぱいの机。

私は伸びすぎた前髪の奥から見える風景をうつろな目で見た。
いつからこうなったのか、私はよくそんなことを考える。

1学期は普通だった。
友達もちゃんといたし、それなりに目立つ存在だったような気がする。
問題は、2学期。
夏休みが終わってすぐだっただろうか。
なぜか私の机だけ廊下に出されていた。

日野百合(ひのゆり)私の名前が書いてあるシールが、ちゃんとその机には貼ってあった。
だから、自分の机だとわかった。

その時の周りの目は、思い出そうとしたら、いまだに足が震えてしまう。
忘れようとしても、脳裏に焼き付いて、離れてくれない。


いじめだ。


私は瞬間的に悟った。
自分がいじめの標的になってしまったことを。

泣きたかった。
でも、泣いてしまったら、負けてしまうような気がした。
必死で自分で自分をなだめた。


大丈夫大丈夫。


そう言い聞かせて、私は机を戻した。

それが、高校一年生の2学期のことだった。

更新日:2013-05-02 17:22:00

  • Twitter
  • LINE
  • Facebook