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バイバイ


「なあ~、山崎ぃ~。」


聞きなれた男子の声が聞こえて、私は眉根を寄せた。


あぁ、もう!
うるさいうるさいうるさいうるさい!


私、山崎優衣(やまざきゆい)は高校二年生。
それで、うるさい男子が、幼馴染の木村景(きむらけい)。


「なんなの!? いい加減、うるさいんだけど!」


私が怒気を含んだ声で言っても、うるさい声は止まらない。


「だってよぉ~、放課後に残って補習とか、ありえねぇだろ?」


「しかも二人で。」と景は付け足した。
私は問題を解いているペンを止めて、景のほうを見た。
隣で問題を解いている景は、ペンをくるくるとまわしながら唸っていた。


「そりゃあ、私だっていやだよ。 ってか、早く問題解けよ!」


私はまだ三問ほどしか解けていない景のプリントを見ていった。
景は口をとがらせると、まわしていたペンを止めた。


「しかたねぇじゃんか。 俺、馬鹿だし。」


私はその言葉に吹き出した。


「そうだね、あんた馬鹿だもんね。」


私がそういうと、景はむっとした顔になった。


「そういう山崎だって、俺と同じくらいの成績だろうが!」


「う、うっさいな! ほら、私はまだ本気だしてないから。」


私が取り繕うとしても、景は引き下がらない。


「はーい、山崎も馬鹿けってーい!」


私は楽しそうに笑う景を睨みながら、少し悲しくなった。
別に、馬鹿って言われたせいじゃない。


いつから景は、私のことを『優衣』って呼ばなくなったんだろう?


いつも景に『山崎』と呼ばれるたびに、そんなことを思うようになっていた。

更新日:2013-04-20 20:08:50

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