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「もう、いいや。」


私はそうつぶやくと、席を立った。

ゆっくりゆっくり、屋上へと向かう。

屋上へのドアがやけに大きく見えて、少し怖かった。
私は、そんな思いを首を振って追っ払うと、ゆっくり、ドアノブを回した。

冬の冷たい風が、私の頬を撫でた。


気持ちいい。


私は一歩踏み出しながら、目をつぶった。

今ならいやなことを忘れられそうだった。


「…でも、決めたから。」


私は自分に言い聞かせるようにそうつぶやくと、
ゆっくりと柵のほうに近づいた。
柵を乗り越えようとしたけど、足が震えてできそうにない。


なにしてんの、決めたんでしょ?


私はいらだちながら自分に問いかけた。


「…わかってるよ…っ!」


私はそうつぶやくと、柵をつかんだ。
視界に広がるのはちっちゃい家屋。

ゆっくりと、深呼吸をして、柵を乗り越えようとした。

でも、やっぱり足の震えは止まらない。


「…だな…いやだな…死ぬのは…。」


認めたくないけど、声が震えていた。

私はそんなことを言いながら柵を乗り越えようとした。

カシャン

そんな音が耳にうるさい。


「…助けてっ!」


そんな言葉も誰にも届かない。

更新日:2013-05-04 00:43:33

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