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さよなら



「ねえ、先生?」


私がそういうと、先生はゆっくりとこちらを向いて、


「なんですか、宮浦さん?」


と、優しく返してくれる。
私はそんな先生が大好きだ。
眼鏡の奥から覗く優しい瞳も、
いつもゆるく弧を描いている口元も、
私は大好きだ。

私、宮浦咲喜(みやうらさき)は、今年高校三年生。
というか、もう卒業だ。
明日、卒業する。
そんな私は、いつも通りぼんやりと、大好きな先生と過ごしていた。


「先生は、私が卒業しても、この学校にいるんですか?」


私は上履きのつま先らへんを見ながらそう言った。
先生の唸るような声が聞こえた。


「そうだね、この学校に残るよ。」


そういって、多分だけど笑いかけてくれた。


「そうですよね。先生は、卒業、しませんもんね。」


私は少し唇をとがらせてそういった。
先生の「ははは。」と言う優しい笑い声が聞こえた。


「笑わないで下さいよ。
 …こっちは真剣なんですよ?」


「そうだね、ごめんなさい。」


先生は笑いながら謝った。


それは謝ったって言わないんですよ。


私は口の中でそうつぶやくと、先生に向きなおった。


「先生?」


「なんですか、宮浦さん?」


先生が微笑みながら訊き返した。
私も少し微笑んで、先生から視線を外してから言った。


「先生は、私が卒業したら、さみしいですか?」

更新日:2013-04-18 22:03:54

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