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カノジョとカレ
翌朝、何もなかったような顔して部に出た。元気に冷静に…と。
「藤川、中西おはよー!…三上おはよー!」
アイツは小さな声で「オゥ」と返事しただけだった。
練習中もミョーに静かだった。いつも、あんなにうるさいのに。話し掛けても返事は曖昧…そのくせ他の女マネと話してる。そのうちオレと目も合わさなくなった。きのう怒り過ぎて嫌われたか?
それとも元々オレのことなんて、どーでも良かったのか?
…なら「大切」って、どういう意味だったんだよ?
モヤモヤを吹き飛ばすように、藤川たちと笑う。
「アヤって、こんなテンション高かった?」
「うーん、どーかな?こんなもんじゃない?」
時折チラリと見るアイツも、ユカたちと笑ってた。張り合うように大声で笑う。
「やぁだ!バッカ!藤川サイテー!変態!」
顔は笑ってたけど泣きそうだった。
練習後の女マネ部屋でユカに聞かれた。
「あんたたち、ケンカしてる?」
「…別に」
「でも全然きょう話してないじゃん」
さすがアヤの一番の親友。ユカは敏感だ。
「…ウチら、ただの友達だもん。話さない日もあるよ」
言ってて目が潤んだ。
「涙そんなに溜めてるくせに。ほん……っと素直じゃないよね」
シカトされて泣きそう…なんて言えるかよ…。素直に泣きつけたらとも思う。でも、これでも中身は男なんだ。…もちろん、それは言えねーけど。
いつもそうだ。本当のコトは誰にも話せない。話したらバカだと思われる。
でもユカは、いつもオレのガチガチに固まった心を上手くほどいてくれる。ユカと話すと、少しだけど気持ちが救われるんだ。
「アヤさあ。三上くん好きなら、意地張らない方がいいよ」
好き?だ誰が!
「そ、そーゆんじゃないから」
元の自分だぜ?気持ちわりー。
「なら、なんで落ち込んでるの?話したいんでしょ?一緒にいたいんでしょ?」
「別に…」
ユカは苦笑いしてた。
「分かった。分かった。とりあえず三上くんのフォーム見て、コーチして、アドバイスしてあげてよ」
「え?」
「アヤはそこらの男子にも負けない野球マニアなんだから。監督ボヤいてたよ。“三上はワシよりアヤの言うこと聞く”って」
監督そんな風に…
「だから部のために…ね?」
部のため…か。ソレ言われると弱い。
「…分かったよ」
まぁいいか。投球だけは見てやるか。
二人で女マネ部屋を出た。
「今晩絶対電話しなよ」
「わかったよ」
「だいたい素直じゃないのよアヤは。目ハート型にして“好きじゃない”とか」
「もぉウルサイ!してないから!」
「でも大丈夫。三上くんだってハート型だから」
「ほんと?!」
それオレも感じる時ある。やっぱり?
「出たハート型」
「あ…!またぁ?もぉっ!」
ユカがイタズラっぽく笑った。
「実はさ、三上くんに相談されたんだ」
「え?なんて?」
アイツどう話したんだろ?
「エッチなコト言って怒らしちゃったって」
簡単に言いやがって。まぁそれ以上は話せねーか。
「三上くんモテんだからさ。意地張るとアヤが損するよ」
…分かってるよ。
「男の子なんてエロいの当然なんだからさぁ。今回はアヤが折れてあげなよ」
…アイツ本当は女なのに…。でも今回だけは許してやるか
校門に丸坊主の大きな男が立っていた。アイツだ!待っててくれたんだ!
けど足を止めた瞬間、アイツと話し込む白鳥さんが見えた。
どう反応すればいいか分からなかった。何とか笑顔をキープし、二人の前を通り過ぎた。
「おつかれ…」
ちゃんと笑えてたかは分からない。オロオロしてるユカを置いてダッシュした。
「ちょ、ちょっと?アヤぁー!」
なんで?あの二人、まさか…白鳥さん言ってたじゃん。『今は男の人とお付き合いするなんて考えられない』って。そう聞いたからオレは必要以上に押さなかったんだ。
アイツだって、あんなにデレデレして…くそくそっ!二人してさぁ。バカにしてるよ。
どれだけ走っただろう。いや、きっと大した距離じゃない。だってアヤの体だ。胸にちぎれそうな痛みが走って足を止めた。何だよこの体…
息を弾ませて公園のベンチに座り込んだ。両手のひらをお尻に回し、スカートを整えて膝を揃える仕草も、すっかり板に付いた。でも膝開いてどっかり座るなんて、もぉできないよ…くそっ。
白鳥さん…あんなに楽しそうに男子と話すの初めて見た。アイツの肩なんか叩いちゃったりして…オレが三上だった時と、全然違う顔してた…。
清楚で優しくて、上品でお嬢様っぽくて、イヤミがなくて…話してると、ほんわかした気分になる女の子。男なら誰だって引かれると思う。
ヒドイよ白鳥さん…その三上、中身は女なんだぜ?なんでオレが三上だったときより仲良くなってんの?そりゃ、アイツは女の子が喜ぶことサラッと言うけどさぁ…
「藤川、中西おはよー!…三上おはよー!」
アイツは小さな声で「オゥ」と返事しただけだった。
練習中もミョーに静かだった。いつも、あんなにうるさいのに。話し掛けても返事は曖昧…そのくせ他の女マネと話してる。そのうちオレと目も合わさなくなった。きのう怒り過ぎて嫌われたか?
それとも元々オレのことなんて、どーでも良かったのか?
…なら「大切」って、どういう意味だったんだよ?
モヤモヤを吹き飛ばすように、藤川たちと笑う。
「アヤって、こんなテンション高かった?」
「うーん、どーかな?こんなもんじゃない?」
時折チラリと見るアイツも、ユカたちと笑ってた。張り合うように大声で笑う。
「やぁだ!バッカ!藤川サイテー!変態!」
顔は笑ってたけど泣きそうだった。
練習後の女マネ部屋でユカに聞かれた。
「あんたたち、ケンカしてる?」
「…別に」
「でも全然きょう話してないじゃん」
さすがアヤの一番の親友。ユカは敏感だ。
「…ウチら、ただの友達だもん。話さない日もあるよ」
言ってて目が潤んだ。
「涙そんなに溜めてるくせに。ほん……っと素直じゃないよね」
シカトされて泣きそう…なんて言えるかよ…。素直に泣きつけたらとも思う。でも、これでも中身は男なんだ。…もちろん、それは言えねーけど。
いつもそうだ。本当のコトは誰にも話せない。話したらバカだと思われる。
でもユカは、いつもオレのガチガチに固まった心を上手くほどいてくれる。ユカと話すと、少しだけど気持ちが救われるんだ。
「アヤさあ。三上くん好きなら、意地張らない方がいいよ」
好き?だ誰が!
「そ、そーゆんじゃないから」
元の自分だぜ?気持ちわりー。
「なら、なんで落ち込んでるの?話したいんでしょ?一緒にいたいんでしょ?」
「別に…」
ユカは苦笑いしてた。
「分かった。分かった。とりあえず三上くんのフォーム見て、コーチして、アドバイスしてあげてよ」
「え?」
「アヤはそこらの男子にも負けない野球マニアなんだから。監督ボヤいてたよ。“三上はワシよりアヤの言うこと聞く”って」
監督そんな風に…
「だから部のために…ね?」
部のため…か。ソレ言われると弱い。
「…分かったよ」
まぁいいか。投球だけは見てやるか。
二人で女マネ部屋を出た。
「今晩絶対電話しなよ」
「わかったよ」
「だいたい素直じゃないのよアヤは。目ハート型にして“好きじゃない”とか」
「もぉウルサイ!してないから!」
「でも大丈夫。三上くんだってハート型だから」
「ほんと?!」
それオレも感じる時ある。やっぱり?
「出たハート型」
「あ…!またぁ?もぉっ!」
ユカがイタズラっぽく笑った。
「実はさ、三上くんに相談されたんだ」
「え?なんて?」
アイツどう話したんだろ?
「エッチなコト言って怒らしちゃったって」
簡単に言いやがって。まぁそれ以上は話せねーか。
「三上くんモテんだからさ。意地張るとアヤが損するよ」
…分かってるよ。
「男の子なんてエロいの当然なんだからさぁ。今回はアヤが折れてあげなよ」
…アイツ本当は女なのに…。でも今回だけは許してやるか
校門に丸坊主の大きな男が立っていた。アイツだ!待っててくれたんだ!
けど足を止めた瞬間、アイツと話し込む白鳥さんが見えた。
どう反応すればいいか分からなかった。何とか笑顔をキープし、二人の前を通り過ぎた。
「おつかれ…」
ちゃんと笑えてたかは分からない。オロオロしてるユカを置いてダッシュした。
「ちょ、ちょっと?アヤぁー!」
なんで?あの二人、まさか…白鳥さん言ってたじゃん。『今は男の人とお付き合いするなんて考えられない』って。そう聞いたからオレは必要以上に押さなかったんだ。
アイツだって、あんなにデレデレして…くそくそっ!二人してさぁ。バカにしてるよ。
どれだけ走っただろう。いや、きっと大した距離じゃない。だってアヤの体だ。胸にちぎれそうな痛みが走って足を止めた。何だよこの体…
息を弾ませて公園のベンチに座り込んだ。両手のひらをお尻に回し、スカートを整えて膝を揃える仕草も、すっかり板に付いた。でも膝開いてどっかり座るなんて、もぉできないよ…くそっ。
白鳥さん…あんなに楽しそうに男子と話すの初めて見た。アイツの肩なんか叩いちゃったりして…オレが三上だった時と、全然違う顔してた…。
清楚で優しくて、上品でお嬢様っぽくて、イヤミがなくて…話してると、ほんわかした気分になる女の子。男なら誰だって引かれると思う。
ヒドイよ白鳥さん…その三上、中身は女なんだぜ?なんでオレが三上だったときより仲良くなってんの?そりゃ、アイツは女の子が喜ぶことサラッと言うけどさぁ…
更新日:2013-12-19 15:15:02