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男になった女がカッコ良く、女になった男が恥ずかしく惨めに思えるのは何故だろう?入れ換わって違う性別を演じているのは同じなのに。

アイツも少し考え込んだ。
「うーん…結局は女性差別なのかなぁ」

男は偉いから、女なんかになるのは屈辱的…逆に女が男になるのはカッコいい…社会全体にそういう考えがあるんじゃないかと。

でも、そこまで分かってるんなら何故オレを女として辱しめるようなコト言うんだ?ましてやイヤらしい目で見て興奮するなんて…!

「なんでオレばっかり惨めな思いしなきゃなんねーんだよ…オマエがそんなんだから、オレが辛い思い…いきなり入れ換わっただけでショックなのに…別の女と付き合ってオレを女のまま捨てて…!何だと思ってるんだよ!」

こらえ切れず、とうとうオレは泣き出した。

「人を変態みたいに…!女のくせに女をそういう目で!だいだいエラそーだよ!ちょっと騒がれてるからって調子に乗り過ぎじゃん?」

オレの剣幕にアイツがオロオロしてるのが分かった。入れ換わってから何度も喧嘩したが、ここまで怒ったのは初めてだ。珍しくアイツがビビってるのが分かる。「わかった、ごめん」と何度も繰り返している。

「オマエが活躍できてるのは、オレが幼稚園の時から毎日、腕立て腹筋、ランニング、素振り、投げ込み欠かさなかったからだろ!周りの子がゲームだマンガだテレビだ言ってるときに地道な練習やってきたのはオレだ!オレ!オマエは自分が最大限に力を引き出してるとかいうけど、オレが鍛えた体がなかったら何もできないんだからな!」

もう自分が止められない。

「ホント冗談じゃないよ!何オイシいトコだけ持ってってんのよ?あたしに悪いと思わないの?ねぇどうなの?」

アイツが借りてきた猫のようにオドオドしていた。

「わ、悪いと思ってるよ」
「なら、どー責任取ってくれるの?ねぇ?早く元に戻してよ、ねぇ」
「そんなこと言っても…どうしたらいいか…」
「どう責任とってくれんのよ!」

逃げ場のないアイツをいたぶるように追い込む。以前の自分と違う、ネチネチしたやり方。そんな自分がイヤなのに止められない。自分を制御できない苛立ちが、さらに怒りを倍増させる。

「もう知らない!バカ!おめーだって、女のくせにすっかり男して!この変態!」

オレは捨て台詞を吐いて、走り去った。


電車の窓を流れていく田園風景。窓からの風が、火照った体を冷やしてくれるのが気持ちいい。

この胸のモヤモヤも吹き飛ばしてくれたらいいのに。

せっかく仲直りできたのに…バカだなオレ。でも気持ち悪くて仕方なかった。オレをそんな目で見てるなんて。

風になびく長い髪。この異常な状況に慣れてはきたけど、正気に戻ると、やっぱり変だ。つい最近まで男だった自分がセーラー服とか着て、ミニスカートで生足出してるんだから。

胸から脇、背中を締め付けるブラの感触。毎日身に着けているうちに普通になっちゃったよ…。汗で張り付くブラウス。丸見えだったかもな…。

男だった時、ブラ透け見るとチョードキドキした。普段は教室で一緒にバカ言ってはしゃぎ合ってる子が“女なんだ”って意識させられる瞬間。アイツもオレをそーいう風に見てたんだろーな。

くそっ。でも女からしたら、普通に服着てるだけだぜ?こんなのに興奮されたら、どーしたらいーんだよ。

ちくしょ…マジで女なんだなオレは。

自分の感情が制御できなかった。そんな自分に腹が立って…。でも我慢できなかったんだ…。

こんなんじゃ、オレのこと嫌いになっちゃうかも。今どう思ってるかも分からないけど。「一番大切な存在」って、どういう意味だったのかな?

アイツがまた別の女の子を好きになっちゃうかも。いや、オレだって分からない。想像したくないけど、別の男を好きになったりしたら…。

オトコ化していくアイツを見ていると、オレだってオンナ化しないとは言い切れない。

いや、まだ大丈夫だ!全然オトコだぜ、オレは!『あたし』なんて、単なる呼び方の問題だ。

それにしてもアイツ…追いかけても来なかった。それなら携帯に連絡くらいくれてもいいのに…と思いながらカバンを見て気づいた。女マネ部屋に忘れてきちゃった…。しまった…きょうの夜には仲直りする計算もあったんだけど…あしたまで、このままか…。

あした、部活行きにくいな…でも行かなくちゃ。何もなかったような顔して行かなくちゃ。

更新日:2013-12-19 15:10:33

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