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ありがとう

高速を制限速度ギリギリで走る帰りの車の中、テミンの苦しそうな呼吸が響く。
どんどん熱が上がって、30分程前に寄ったサービスエリアで計った時は39度近かった。

「もう一回休む?」

「ん…」

車を停めて隣で体を丸めるように座るテミンの額に手を伸ばす。
さっきよりも熱い体温に、ミノは心配そうに眉を寄せた。

「ちょっと待ってて。飲み物買ってくる」

頷くテミンを置いて中の売店で冷たい飲み物を何本か買い込み、再び車に戻る。
よく冷えたペットボトルを首の後ろに当ててやると、さっきまで辛そうに目を閉じていたテミンがようやくミノの方を向いた。

「冷たかった?」

「ううん…平気……」

「もうすぐ着くから。頑張れそう?」

「も…ちょっと……、待って…」

「ん。分かった」

行きの倍は時間を掛けてやっとのことで病院に戻れたのは夕方。
点滴に解熱剤を入れて、熱が下がるのを待つ。

「ヒョン…、寒い……」

毛布にくるまるテミンの体をさすり続けていると。
コンコン、とノックの音。

「はい」

短いミノの返事に促されて入ってきたその人は。

「やっぱりここにいた」

そう綺麗な弾んだ声で言い笑顔を見せた。

声を聞いた瞬間にテミンの表情が硬くなり、毛布をぎゅっと握り込む。

「ソユン…、どうした?」

「外科部長が探してたから、呼びに来たの」

「俺、今日は休みだけど?」

「でも、どうせここにいるかな、と思って」

背中をさする手を休めずに、ミノはテミンの顔を覗き込んだ。
額に玉のような汗を浮かべて辛そうに目を閉じるテミンをひとりにはできない。

「ごめん。今手離せないから、後で行くよ」

「そう?」

澄んだ声が、妙にはっきり聞こえる。

テミンには分かった。
笑顔を崩してはいないのだろうけど、ソユンの声が笑っていないこと。

「…手が離せないんじゃなくて、ミノが離さないだけなんじゃない?」

何が言いたいんだと顔を向けたミノに、もうひと言。

「ミノがいない間、私が代わればいいだけの話でしょ?」

その言葉に、ミノの手が止まった。


更新日:2013-08-08 02:22:42

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