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第4章 意志が穿つ(いし が うがつ)

「うっ。」
突然響いた轟音と目もくらむような閃光に思わず目を閉じてしまった私。
けれども目の前にいる雷牛の恐怖からすぐさま目を開けようとするのだが
なぜか目の前は明るい光に包まれたまま。
夜だというのにその異様な光景に思わず私は目を瞬く。

「蓮華さん、よけて!!」
けれどもそれに戸惑うのもつかの間、ガブリエルさんの声に我に返った私は
一足飛びに飛び上がった。

―ダーーーーーーーーン

その直後雷牛の放った電撃が私の立っていた地面を穿つ。

「こわぁ。」
けれどもなぜだかさっきまでのように体が震えることはなかった。
そこでようやく私は自分の体に起きている異変に気付いたのだった。

腕を前に伸ばすと光を纏っているのだ、いや腕だけではない。
体も足も、確認はできないがおそらく頭も。
つまりは私の全身が光を纏っているのだった。

「暖かい。」
震えが止まっているのは光のおかげで体が温まっているからだろうか。
その光が私の心を奮い立たせてくれているようだった。

「ブルルルルルルルルルルル。」
けれども対峙する雷牛も気合十分。
とてもじゃないがただの人間である私に止められるとは思えない、けれど。

「蓮華さん、もっと、もっと意志を。強い意志を示すんです!!」
「私は・・・ガブリエルさんを傷つけさせない!!」
だって、目の前で苦しむ人がいるんだよ。自分が傷つくからって動かないわけにはいかないじゃない。


「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!!」
勇気が体の底から湧いてくる。
それはいままで空っぽだった杯を水が満たしていくように滑らかによどみなく。

「勇気が、満ち満ちてきた!!」
湧き上がった勇気を胸に私は駆け出す。
私を包む光はそんな私を後押しするように輝きを増していく。

―ガシッ

「くっ。」
「ブルルルルルルル。」

駆ける私に突き出された雷牛の角。
雷を纏ったその角を私はすでで受け止める。

「蓮華さん!!」
「うっ、大丈夫。」
掌に感じる痛みはけれども我慢できないほどでなく
私は奥歯をぐっと噛みしめさらに雷牛へと一歩近づく。

「ブルルルル。」
雷牛の纏う雷の量が目に見えて増大している。
つまりこれは雷牛が全力を出している証拠だろう。
これがガブリエルさんの言っていた瓶が私に応えてくれるということ?
だったら。

「うああああああああああああああああああああああああ。」
これが火事場の馬鹿力とかいうやつだろうか。
私の目の前で起きている信じられない光景。
さらに新じっれないことにそれを起こしているのは私なのだ。

何が起きたのだろう。それをようやく理解した時には私の頭上を雷牛が舞っていたのだった。

更新日:2013-03-04 00:08:52

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