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「White snow」 第一章 -黄金の月ー 完結

彼女(ひとみ)から初めて父親の話を聞いたのは彼女と知り合ってから数年経ってからの事だった・・・



当時の俺は彼女が言う、父親への感謝と想いの深さを理解しきれていなかった・・・

でも、彼女はそれを察してか多く語ろうとはしなかった・・・



彼女にとって俺は必要な存在ではなかったのではないか・・・

俺が彼女のために出来たこと・・いったい何があったのだろう・・・



彼女は決して強い子ではなかったはず・・・



誰よりも頑張り屋で誰よりも強がって見せていた・・・本当は一番不安で恐かったはずなのに・・・



強がりを言い、俺を安心させ笑ってくれた、ひとみ・・・



彼女の秘密(病気)を知ってから俺は君とどう向き合えばいいのか困惑した・・・



そんな俺を君は優しく抱きしめてくれこういった







『ひとみなんか辞めちゃいなよ 望君を最後一人にしちゃうから(笑)でもね、今は精一杯抱きしめてあげる・・・』







俺は泣くことしかできなかった・・・



悔しくて・・悲しくて・・情けなくて・・・



命をかけた人への想い・・・



彼女の大きさに甘え支えて貰いたかった・・・



まるで悲劇のヒーローにでもなったかのように・・・一番辛いのは俺じゃなくてひとみなのに・・・



それからの俺は何もわからないまま彼女と距離を少しずつあけるようになった・・・



彼女の想いや気持ちを本当に理解しないまま会うのは・・・そして本当に俺の人生に彼女は必要なのか・・・

彼女は俺を本当は疎ましく思っているのではないか・・・・いや・・強がっているだけで本当は支えてほしいのではないか・・・・






沢山の想いが頭を巡った






自分ならどうして欲しいか・・・自分の体が・・・と考えた時に寂しい想いをさせたくないなら・・・



このまま別れてしまう方がいいのではないか・・・・



本心で考えるんだ、明日がわからない命だとしたら最後はどうしていたいか・・・









「傍に居てほしい・・・」








俺がこの事に気づいた時、頬を伝うものがあった・・・



彼女は誰からでも愛されるほど愛嬌がありとても優しい人・・・



こんな素敵な人はもう二度と会えないかもしれない・・・



奇跡を起こすんだ・・・医学だろうが神様だろが、そんなものは関係なんてない



俺達は俺達で奇跡を起こすんだ・・・



奇跡が起こせるのであれば俺は何でも捧げる・・・



君の病気を知りながらも知らないふりもしてきた時期、君への想いにくじけそうになったこともあった



平気な顔して全然冷静じゃなかった俺がいた



君はそのことに気づいていたのかどうかわからないけど・・・何も言わなかったね・・・





ごめん、正直言うと察して欲しかったんだ・・・



俺は君と居ると先の事より現実が受け入れられなくて・・・



悲しくて・・・痛くて・・・しかたがなかった・・・





出会った時の君はとても輝いて見えた・・・



そんな大きな事を抱えている人だとは感じ取れないほど・・・





俺は君から愛を学び、想いを知った・・・






ひとみが好きだった月・・・



君は色んな形に変わる月を見て、笑顔を見せ時には涙を見せたね・・・




俺は思った・・・





「俺はひとみの月になろう・・・」





夜空に黄金の月をえがこう

ぼくに出来るだけの光をあつめるんだ




ぼくの未来に光などなくても

誰かがぼくの事をどこかで笑っていても

君のあしたが みにくくゆがんでも

ぼくらが二度と純粋を手に入れなくても





































第一章「黄金の月」完結




次回、第二章「虹」


更新日:2013-05-25 14:16:12

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