官能小説

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夫婦誕生

「シヌヒョン、寝ちゃった」

練習室のすぐ脇にある作業部屋から出ると、バロが、寝ているシヌをつついていた。

「もうお前たち、戻って寝ないと」
「うん」
「いいよ。シヌは、連れて帰るから」
「ジニョンヒョン、まだかかるの?」
「もう少しね」
「シヌヒョン、寒くないかな?」
「毛布かけてやって」
「うん」

転がるシヌと、毛布を取りに行くチャニを横目に、オレは作業部屋に戻った。

━─━─━─━─━─

頭を撫でられる感触で、現実に引き戻された。
―母さん?―
そんな訳ないか・・・。
目をつぶったままでいたけれど。
その手は、ジニョンのものだろうと、何となく思っていた。

いつからかわからない。もう忘れてしまったけれど。
オレたちの間に流れている空気が、変わった。

気付けば、ジニョンと視線が合う。
なのに、視線が合うと、フイと逸らされる。
何か、オレに気に入らないことがあるのかと思っていた。
でも、話していても、何か怒っているような感じでもない。
何より、気に入らないヤツの頭を、こんなふうに撫でないだろう?少なくとも、オレはそうだ。
じゃあ一体、どうしたっていうんだろう?
ジニョンの気持ちが、わからない。

今起き上がって、手を掴んでやろうか?
「何か言いたいことがあるんじゃないのか?」
そんな風に、問い詰めてしまいたくなる。
けれど、そうしたら、何かが変わってしまうような予感がして、怖くて、何も出来ない。
ジニョンは、オレの大切な親友だ。

「シヌヤ・・・」
ジニョンが小さく呟いて、大きな溜息をついた。
ジニョンの溜息が、指に当たって、冷たい。
・・・こんな感情をなんて言うんだろう?

―切ない・・・?

今まで、こんなに苦しい思いで、自分以外の誰かのことを考えるなんてこと、一度もなかったかもしれない。
感情は伝染するんだよ、ジニョン・・・。
お前の気持ちが、オレを苦しめるんだ。
何か、悩み事があるのか?問い詰めたら、何か答えるだろうか?

一見、ポジティブの塊のようなジニョンが、繊細で人の気持ちに敏感なのを知っている。
プライドの高い、負けず嫌いのこの男が、こんな風に弱っている姿を、オレに見られたくなどないだろう。そう思うと、開きかけた目を、開けることは出来なかった。
ただただ、頭を撫で続けるジニョンの手と、何度も指に当たる溜息を、感情を殺して受け止めるという選択肢しか、オレには選べない。

頬に、何かやわらかい感触が当たって、無意識に体が反応した。
そんなオレにビックリしたのか、ジニョンが飛び退いたのがわかった。
オレは、ゆっくり目を開けた。視界の隅で、ジニョンが眉を寄せていた。

「あ・・・寝てた?オレ?」
「あ・・・。うん。みんなもう帰った」
「ジニョンは?まだ何かやることがあるのか?」
「いや、もう何もない」
「じゃあ、帰るか?」

そう言って、ジニョンに両手を出した。”起こしてくれ”というジェスチャーだ。

―この手をジニョンが取ったら、きっと何もかもが元通りになる―

そんな小さな願掛けをした。



更新日:2013-02-20 10:44:33

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