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第一章 運命
神なんてものこの世には存在しない。
佐田野 尊(さたの みこと)はいつも口癖のように一人で呟く。もしも神が本当に存在するのならば世界はもっと良くなっていたはずであるから。不幸も不平等も生まれずに全ての人間が幸せに暮らすことができたはずだから。
所詮神なんてものは人間がつくりだした心の拠り所程度の存在だったはずだ。なのに今その存在がこの世界に罰を下そうとしているなんて彼は甚だ信じられなかった。
だから彼にとって今現在、坊主頭の厳つい顔をした男性教師が話す近代歴史の授業の内容は耳を塞ぎたくなるほどに苦痛なものだった。
「『最後の楽園』が現れてから既に十年という歳月が経った今、それ以前と比べて世界の人口は急激に減少傾向にある」
最後の楽園とは今から十年前に突如として太平洋のど真ん中に現れた島のことである。その島は普通の人間は上陸することができない。しようとすると何かしらの不運に見舞われて二度と帰らぬことになるから。しかし神罰教の人間は上陸でき、後に彼らの話でそこには絵に描いたような楽園が広がっていたということからそう名付けられた。
「その理由は何だ? 河野」
「神罰教が知恵の実の力を使って富や権力を独占する者、天才的な科学者や技術者、神を信じない人間を次々と罰と称して殺しているからです」
この内容は明らかに生徒に語らせる内容ではない、だが教師は敢えて生徒に語らせた。戒めの意を込めて。
「その通り、ありがとう河野。神罰教は最後の楽園の真ん中に聳え立つバベルの塔の最上階に立つ知恵の木に生る知恵の実の能力を使って人類に罰を下しているのだ―――神に代わって」
先ほどから話の中に出てくる神罰教とは、世界は神が創り出したものでありその世界で人類が神に挑むと言わんばかりの行為を犯して貧富の差を拡大させていることに対して神が罰を下してくれることを信じていた宗教団体。今では神から授かった知恵の力を使って神に代わって自らが人類に罰を下している。
最初の構成メンバーは貧しい人々が中心だったが、最後の楽園が現れて罰が下されるようになってからは信者が急激に増えて今では大きな力を持つ存在へとなっている。
しかし信者の大半は殺されたくないからという理由なので、心から信仰しているものは全体の半分以下。そのような信者は見かけ信者と言われている。
なのでこの学校の生徒も教員も信者の証である十字架のネックレスを身につけている―――尊を除いて。
佐田野 尊(さたの みこと)はいつも口癖のように一人で呟く。もしも神が本当に存在するのならば世界はもっと良くなっていたはずであるから。不幸も不平等も生まれずに全ての人間が幸せに暮らすことができたはずだから。
所詮神なんてものは人間がつくりだした心の拠り所程度の存在だったはずだ。なのに今その存在がこの世界に罰を下そうとしているなんて彼は甚だ信じられなかった。
だから彼にとって今現在、坊主頭の厳つい顔をした男性教師が話す近代歴史の授業の内容は耳を塞ぎたくなるほどに苦痛なものだった。
「『最後の楽園』が現れてから既に十年という歳月が経った今、それ以前と比べて世界の人口は急激に減少傾向にある」
最後の楽園とは今から十年前に突如として太平洋のど真ん中に現れた島のことである。その島は普通の人間は上陸することができない。しようとすると何かしらの不運に見舞われて二度と帰らぬことになるから。しかし神罰教の人間は上陸でき、後に彼らの話でそこには絵に描いたような楽園が広がっていたということからそう名付けられた。
「その理由は何だ? 河野」
「神罰教が知恵の実の力を使って富や権力を独占する者、天才的な科学者や技術者、神を信じない人間を次々と罰と称して殺しているからです」
この内容は明らかに生徒に語らせる内容ではない、だが教師は敢えて生徒に語らせた。戒めの意を込めて。
「その通り、ありがとう河野。神罰教は最後の楽園の真ん中に聳え立つバベルの塔の最上階に立つ知恵の木に生る知恵の実の能力を使って人類に罰を下しているのだ―――神に代わって」
先ほどから話の中に出てくる神罰教とは、世界は神が創り出したものでありその世界で人類が神に挑むと言わんばかりの行為を犯して貧富の差を拡大させていることに対して神が罰を下してくれることを信じていた宗教団体。今では神から授かった知恵の力を使って神に代わって自らが人類に罰を下している。
最初の構成メンバーは貧しい人々が中心だったが、最後の楽園が現れて罰が下されるようになってからは信者が急激に増えて今では大きな力を持つ存在へとなっている。
しかし信者の大半は殺されたくないからという理由なので、心から信仰しているものは全体の半分以下。そのような信者は見かけ信者と言われている。
なのでこの学校の生徒も教員も信者の証である十字架のネックレスを身につけている―――尊を除いて。
更新日:2013-02-20 17:00:14