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旧校舎のディアボロス 第4話

結局、その日は陽光を浴びながら授業と言う拷問を1日受けた。
朝のHR(ホームルーム)に遅刻してきた松田は、心ここにあらずといった感じで授業を受けていた。
おそらく、俺に貸したエロDVDを捜し求めて公園を探し回ったのだろう。
無理やり押し付けられた物とは言え、松田には悪いことをした。
今度、俺の持ってる物(ブツ)を……いや、アイツの嗜好は俺と真逆だから喜ばないか。
しょうがない、今度何か奢って償うとしよう。

「イッセー悪いんだけど、買い忘れた物があるから買って来てー」

自分の部屋で寛いでいると、母さんからお使いを頼まれた。
朝はだるかったけど、日が沈んでからはだるさも消え、むしろ力が湧いてくるくらいだ。
二つ返事で了承して、買い物に出た。

「なんか妙だな」

人通りのない帰り道、静かなせいか周りの家の会話が聞こえたり、明かりのない道なのに昼間と同じくらいくっきり見えたり。
すると、正面からコツコツと足音が聞こえてきた。
足音は徐々に大きくなり、現れたのはスーツ姿に帽子を被った男。
その男と目が合うと、ゾクッと背筋に悪寒が走った。
男の目はまるで敵を見るように鋭く俺を睨んでいた。

「これは数奇なものだ。こんな場所でも、貴様のような存在に出会うものだな。害虫は何処にでも居ると言うことか……」

俺のような存在? てか害虫!?
両方とも俺のことを指してるんだよな?
存在を疑われたどころか人間扱いすらされてないのかよ。
というか、この人誰?
俺の知り合いにこんな奴はいないはずだから、不審者だな。
不審者への対応は……

「変態が出たぞぉぉぉぉぉぉ!!!」

変態もとい不審者に会った時の対処法その1。
大声で叫びながら全力で逃げる。
こういう手合いの相手は警察に限る。
そうでなくても、人が騒ぎを聞きつけて集まれば変態は逃げ出すはずだ。
なるべく人通りの多いところに向けて走る。

「ま、撒いたか?」

変態から逃げるために全力で走ったが、思ったよりも息が上がっていない。
普段なら途中で音を上げるのがオチなのに、どうなってるんだ?
ともあれ、後ろを振り向くと、人影は見当たらなかった。

「てか、ココ何処だ?」

最初は人通りの多いところに行こうとしたけど、予想以上に変態が早かったから、途中から無我夢中で走った。

「ここは……」

周りの景色から推測するに、天野(クソアマ)に刺された公園の近くらしい。
あんまり、この公園に良い思い出はないけど、確か水飲み場があったはずだ。
走って喉が渇いたし、公園で少し休もうと思って公園に向かった。

「もう気はすんだか? それとも、本気で逃げ切れたと思ったか? なんと愚かな。低級な存在はこれだから困る」
「くっ!」

いつの間にか先回りされていたらしい。
と言うか、なんで公園に向かってるってわかったんだ!?

「念のため聞いておこう。お前は属している主がいるか? 居るなら名を答えろ」

属している主? 何のことだ?

「ふむ。その様子ではいないらしいな」

天野(クソアマ)の時と同じように、黒い翼を生やしながら耳障りな羽音と共に男の手に槍が現れ、次の瞬間、呆けていた俺の寸前にあった。
俺は槍を突きつけられて、ようやく状況を理解して後ろへ飛び退いた。

「ここまでしても、主が出てくる気配はないか。見捨てられたか単なる『はぐれ』か。どちらにしても殺して問題あるまい」

天野(クソアマ)同様、槍を投げてくるか? それとも、さっきみたいに手に持ったまま突き刺してくるか?
どっちにしても喰らわないように、視線を変態に集中する。
さっきは呆けていたから、避け損ねたけど、今度はそうはいかない!

「っ!」

夜目に慣れていたおかげではっきりと変態を捕らえていたが、攻撃に移った変態は早すぎて一瞬遅れて避けた。
身体に刺さりこそしなかったものの、槍先がわき腹を掠めた。
それだけなのに。傷口が熱くなり、ものすごく痛い。
痛むのを承知で傷口に触れると、少し硬い感触がした。
まるで、カリカリに焼けた鳥皮のような感触だ。

「ほう……掠っただけとは言え、痛みに耐えるか。予想以上に頑丈らしいな。次はもっと強く早くするとしよう」

そう言うと、変態の持つ槍の大きさが一回り大きくなった。
確かに痛いと言えば痛いけど、あの黒幼女に貰った飲み物(?)を飲んだ時の痛みに比べれば、どうってことない。
それに、話している間に痛みが徐々収まってきた。
変態が再び俺を刺すべく槍を構えた。
さっきの動きではダメだ。
もっと早く、それでいて変態の動きをよく見て避けないと……
そして、風切り音と共に槍が振るわれた。

更新日:2014-02-15 19:59:52

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