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旧校舎のディアボロス 第2話  小猫side

私が呼び出されたのは、血まみれで倒れていた男の人の所だった。
悪魔契約の常連さんが悪魔祓い(エクソシスト)に襲われたのかと思ったけど、少なくとも私の常連さんじゃない。
新規の人なら、前科がないので悪魔祓い(エクソシスト)に襲われるはずがないし、何かに巻き込まれたのかもしれない。
倒れている人の出血量を見る限り、出血多量でショック死していてもおかしくないくらい。
にも関わらず、まだ意識を保っているのか「生き残る」と口にし続けていました。

「死にたくないんですか?」

私はそう問いかけた。
私は悪魔。対価を払えるならどんな願いでも叶える。
でも、この人に今の状態から命を取り留めるだけの対価が払えるか疑問です。

「死にたくない。こんなところで死ねるか……死ぬのは、彼女の胸の中って決めてるんだ。こんなところで死んでたまるかよ」
「……」

え? 彼女の胸の中って……そこでなら死んでもいいんですか?
少し理解に苦しみます。
とは言え、一応規則なので手順に従って処理するとしましょう。
ええっと、この人の願いは生き残ること。
でも、私じゃその願いは叶えられませんが、部長なら出来るかも知れません。
魔法陣を解して部長を呼びました。

「あら、小猫。貴方がヘルプを呼ぶなんて珍しいわね。そんなに難しいお願いをされたの?」
「……はい」
「ふーん。それで、依頼人は?」
「あそこです」

私は血溜まりに倒れる男を指差した。
部長は顔が引きつっていた。

「あそこって……あの人生きてるの? どう見ても出血死レベルの血溜まりよ?」
「さっきまでは生きてました。まだ生きてるかはわかりません。でも、生きたいって言ってました」
「生きたいねぇ……彼にその対価が払えると思う?」
「わかりません。だから、部長を呼びました」

私達は悪魔。
釣り合う対価なくして願いは叶えない。
部長は、倒れている人に近づいて、息を確認した。

「驚いたわ。まだ生きてる。この子、本当に人間かしら」
「どうするんですか?」
「そうね。いいわ。この子の命、私が拾いましょう。どうせ死ぬならその命、私のために使かわせて貰いましょう。対価も必要なことだしね」

そう言って部長は、赤い『兵士(ポーン)』の駒を出しました。
私にも宿っている『悪魔(イーヴィル)の駒(ピース)』。その中でもっとも価値が低く、数の多い『兵士(ポーン)』。
部長は、まだ1体も『兵士(ポーン)』を作ってないから、8つ全てある。

「我、リアス・グレモリーの名において命ず。この者に相応しき駒を示せ」

部長がそう呟くと、8個あった『兵士(ポーン)』の駒全てが手を離れ、倒れている人の上で止まった。

「この子、『兵士(ポーン)』8つ分の力を秘めているの!?」

『兵士(ポーン)』8つ分。
『騎士(ナイト)』『僧侶(ビショップ)』は、1つで『兵士(ポーン)』3個分。2つ使っても6駒分
私に宿っている『戦車(ルーク)』は、1つで『兵士(ポーン)』5個分。2つ使っても10駒。
1駒しかない『女王(クイーン)』は、1つで『兵士(ポーン)』9個分。
1人につき同種の駒しか宿すことが出来ないから、『兵士(ポーン)』8つと言うことは、『騎士(ナイト)』や『僧侶(ビショップ)』を2つ宿した者よりも強く、『戦車(ルーク)』1つの私よりも強いことになる。
正直信じられない。
そんなに強そうには見えないけど……
部長も、予想以上の結果に驚いている。

「ふふふ。ますます面白いわね。我、リアス・グレモリーの名において命ず。汝、悪魔と成れ。汝、我が『兵士(ポーン)』として、新たな生に歓喜せよ!」

血溜まりにグレモリー家の魔法陣が広がり、8つの駒が男の人の身体の中に入った。
これで、あの人は部長の眷属、私の後輩悪魔になった。

更新日:2014-02-15 19:37:26

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