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旧校舎のディアボロス 第7話 朱乃side

「まったく、信じられないわ。助けに行けば私に目もくれず逃げるし、迎えに行ったらまた逃げるし……」
「彼も命を狙われて大変だったのよ。いい加減許してあげたら?」
「それはわかるけど、今日の朝なんてわざわざ自宅まで迎えに行ったのに逃げるなんて……」

はぁ……だめね。
リアスは、ずいぶん彼に逃げられたことを根に持っているようね。
私もその気持ちはわからなくもないけど、彼には彼の事情があるんだし。命を狙われた直後じゃ警戒心が過敏になるのもわかるわ。
誰が敵で誰が味方かさっぱりわからない状態で、いきなり味方だって言われても、そう簡単信じられないでしょうしね。
まして、直接面識があるわけでも、交流があったわけでもないのだから。
さすがに、リアスを置いて堕天使の前から逃げたのはどうかと思うけど、ちょっと前までただの人間だった彼に全くといって良いほど面識のないリアスを守れと言うのも無理な話でしょうね。
リアスは、なんていうか……乙女願望って言うの?
白馬の王子様が迎えに来てくれるとか、騎士が身を徹して守ってくれるとか、そう言う乙女チックなのに憧れてるから、真逆な行動をされて余計に気になるんでしょうね。
私としては、もう許してあげてもいいと思うんだけど……

「やっぱり、文句も兼ねて私が迎えに行けばよかったかしら?」
「そんなことしたら、周りが騒ぐわよ? ただでさえ、私や貴方は人から注目を集めやすいのだし、誰か1人の男子に肩入れしたら、彼が嫉妬の炎に焼き殺されるわよ?」
「冗談よ。言ってみただけ……」

私やリアスがダメなら、小猫ちゃんでもよかったかもしれないけど、彼女はどうも彼の好みらしいのよね。
最初に呼び出した悪魔も小猫ちゃんだったし。
召喚用の魔法陣は、召喚者の好みや願いに合わせて選ばれる。
彼の願いが『生きたい』なら、転生の手段をもつリアスが召喚されるはずだけど、実際に召喚されたのは小猫ちゃん。
と言うことは、願いが小猫ちゃんでも叶えられるものだったのが、彼女に出会って変わったか。それとも彼女が好みだったのか。
どっちにしても、小猫ちゃんが何かしら影響を与えたことに違いはない。
オマケに、噂によると『変態三人組』のロリ担当が彼らしい。
さすがに猛獣の前にホイホイ餌をやるほど馬鹿じゃないわ。
だから、木場くんに迎えに行ってもらったんだけど……遅いわねぇ。
ちなみに小猫ちゃんは、私達と同じテーブルでケーキを食べている。

「……悪いけど、心霊商法とか勧誘とかなら間に合ってるから」
「ちょっと待って! 帰らないで!」
「ええい離せ! やたら高い壷とか水晶なんて要らないんだよ! どっちかっていうと変態撃退用のスタンガンとか催涙スプレーの方が必要だ!」
「そんな物は取り扱ってないから! あと、そういう活動してるところでもないから! ていうか、部活もカモフラージュだから!」

木場くんともう1人、男の声が廊下から聞こえてきた。
ようやく来たみたいだけど、何か揉めてるみたいね。
この校舎には私達しか居ないからいいけど、結構大きな声ね。
すると、ケーキを食べ終えた小猫ちゃんが無表情で立ち上がった。

「……来たなら早く入ってください。部長が待ってます」
「いいところに! 彼が帰ろうとして……」
「木場! 何やってるんだ? さっさとはいるぞ」
「変わり身早っ!?」

小猫ちゃんが一喝(?)して、騒ぎはあっさり収まった。
というか、こんな簡単に言うことを聞くなら始めから小猫ちゃんを迎えに送ればよかったわ。

「お邪魔しまーす」

小猫ちゃんに続いて、彼こと兵藤一誠、木場くんと教室に入ってきた。

「リアス。全員揃ったわよ」
「ええ、それじゃあ始めましょうか。私達オカルト研究部は貴方を歓迎するわ。兵藤一誠……いえ、イッセー」

更新日:2014-02-15 20:26:36

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