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旧校舎のディアボロス 第1話

第1話

ヤンデレってマジで怖いよね。
いや、ほんとに!
だってさ、見知らぬ女の子の告白を断ったら、光の槍みたいなので刺されたんだぜ?
名前なんて言ったっけかな……
そう、確か天野 夕麻(あまの ゆうま)。そんな名前だったはず。

ある日、下駄箱に手紙が入ってて、白い封筒にハートのシール。
中身はピンクの便箋で女の子独特のかわいい文字が踊っていた。
内容は要約すると『放課後、公園に来てください』というものだった。
行く途中に通った商店街で受け取ったチラシをポケットに捻じ込み、指定さてた場所に行った。
そこには、俺と同じ駒王学園の制服を着た女の子が1人だけ公園にいた。
この時点で妙な感じがしてたんだよな。

公園といえば、子供の遊び場。
まだ放課後になったばかりで、帰るには早い時間だ。なのに、子供が1人もいない。
嫌な予感がして、やっぱり帰ろうと思った時、待っていた女の子『天野 夕麻(あまの ゆうま)』と目が合ってしまった。

「よかった。来てくれなかったらどうしようかと思った」

そう言って、彼女は俺のところに来た。
彼女は俺の手を捕み、公園の中に引っ張り込んだ。
そして、噴水の前に連れて来ると手を放して俺に向き直った。

「あのね。私と付き合ってください!」
「え? いや、俺達初対面だよね?」
「一誠くんはそうかもしれないけど、私は君のこと知ってるよ」

いや、まあ一方的に知ってるのはわからなくもない。
学校じゃ悪い意味で有名だし。
なら、なおさらおかしい。
悪い意味で有名な俺にどうして告白する?
誰かの悪戯ではないかとキョロキョロ周りを確認するけど、それっぽい気配はない。
誰かに見られてる感じもしないし。

「いや、俺の事知ってるなら、何で告白するの?」

自分で言うのもなんだけど、特別に顔が良い訳じゃない。
勉強が出来るわけでも、運動が出来るわけでも、目立った特技があるわけでもない。
平凡と言う言葉がピッタリな人間だ。
それだけならマイナスにはならないだろう。
でも、俺には悪評がある。
同じクラスの松田・元浜と並んで『変態三人組』とか呼ばれ、女子からの評判は最悪のはず。
はっきり行って、告白される要素皆無だ。
初対面でなければ、『不良に襲われてるところを助けた』とかゲームのようなフラグが建っててもおかしくないけど、それもないしなぁ……

「ぐすっ……ごめんね。いきなり告白されても迷惑だよね。でも、私は周りがなんて言おうと一誠くんの事が好きなの」
「あー、えっと、泣かないでくれ。そう言ってくれるのは本当に嬉しいし、こんな俺を好きになってくれるなんて」
「本当に? じゃあ……」
「でも、ごめん」
「……どうして? 何がダメなの?」
「いや、その……学校の評判知ってるならわかるよね? 俺、年下にしか興味ないんだ」

そう、俺は年下趣味。
それも年齢どうこうではなく、スレンダーな体型や小さい体格の子が好みなんだ。
はっきり言うと、彼女は俺の好みから外れる。
彼女自体は可愛いと思うし胸もあるから、そういうのが好みの奴なら放っておかないんだろうけど、残念ながら俺の守備範囲外だ。
もちろん、こんなことを告白してくれた女の子にそのまま言うほど馬鹿じゃない。
きちんとオブラートに包んで伝えたんだけど……

「人間風情が! せっかく私が手向けに幸せな思い出をくれてあげようと慈悲をあげたって言うのに断るなんて……もういいわ。この場で死になさい」

そう言った彼女の背中から黒い翼が生え、宙に浮いた。
羽虫の羽音のような音と共に、彼女の手に槍のようなものが現れ、彼女はそれを俺に向かって投げた。
咄嗟に持っていた鞄を盾にしたけど、槍は鞄をあっさりと貫き、俺の腹に突き刺さった。

「があ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!?」

すぐに尋常じゃない痛みと熱さが身体を襲った。
突き刺さった槍が蒸発するように消え、俺は地面に出来た自分の血溜まりに倒れ込んだ。
なんだよこの展開……告白を断っただけで刺された? なんで?
出来る限り彼女を傷つけないように配慮したのに……

「どうして……こんな……」
「どうしてですって? 人間風情が私を振ったからに決まってるでしょ? 所詮演技とは言え、人間風情に振られるなんて私のプライドが許さないわ」

そんな理由で人を刺したてのかよ……

「まあ、そんなのはついでだけどね。本命は、あなたが私たちにとって危険因子だったからよ。恨むなら、せいぜいその身に神器(セイクリッド・ギア)を宿させた神を恨むことね」

そう言って彼女は飛び去った。
なんだよ。神器(セイクリット・ギア)って……
そんなもん知らねえよ。

更新日:2014-02-15 19:28:30

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