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女が女を嫌う時


明美の性格だと、まず、周りの人間と穏やかに調和してやりたい主義なので、多少いやな思いをさせられた相手に対しても許してしまうところがあり、基本、人を嫌うことはないのだが、それでも、好きな男性に思いを寄せている女性に対しては自分はまけそうな気がして無意識に意地悪はしなくても、少しよそよそしい態度をしたり、好きな男性となるべく近くに座り興味を引いたり、潜在的な嫉妬深さが出てしまっているのかもしれない。

それが、明美が女性を嫌う時。

それ以外は、卑怯な手を使いたくないので、露骨にならないぐらいの手加減で一生懸命好きな人の気を引くように、好きな人の趣味について行ったり、健気なぐらいのやきもちであるが・・。

ライバルに勝つためにはどうしたらいいか、どうしたら自分の方に興味を向けてくれるか?自分の武器は相手の武器に比べて何か?など、分析的思考をして努力で勝つのだと思う。

中には略奪したり露骨に闘志をむき出しにして意地悪をするものもあるかもしれないが、それは明美のプライドが許さないのであった。

この療養施設に明美は週に一度だけ仕事が休みの時に通っている。

それは好きなあの人に会いたかったのと、ずっとやってきた場所で、自分らしさを取り戻すことによって自分のバランスを保つためであった。

奈央もしばらく社会復帰していたのだが、無理をしすぎてまた、ここへ戻ってきたのであった。

明美はずっと、先に奈央が社会復帰してから、心の中では闘志を燃やし、自分もいつか社会復帰してやる、と彼女を手本にしてきたのであった。

彼女がうまくいっているときはそれでよかった。

彼女に一財負の感情はなかった。

しかし、明美の好意を寄せるあの人のことを奈央が好意を持っているそぶりを何となく察すると、彼女には女子力が到底かなわない気がして、不安で、不安でたまらなかったのだった。

せめて、彼が彼女のことをタイプではないことを願うことしかできなかったのだ。

更新日:2013-02-09 23:45:26

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