• 8 / 137 ページ

第三章、巷(ちまた)

挿絵 388*70

この物語はフィクションで、登場する人物や建物は実際には、存在いたしません。
尚この技は架空であり、実際に物理的に出来る技では有りません。

オリジナル:http://blogs.yahoo.co.jp/kome125/folder/1536491.html




次の日、竜彦は画家である創作活動終えて、


横浜で手広く店を展開しているサーフショップ、


根岸に在るヤシの木本店に出向いていた。


店内ではドレッドヘヤーの店主と話をしていた。


店主の牧田が笑いながら、「スケートリンクの幽霊だか、


妖精と恋に落ちそうな、元横浜で幅利かせてた悪だってか、


アハハハ」と、笑い飛ばした。


そして牧田は竜彦の表情を伺い、「何だ怒らねーのかよ」と、


伺うと竜彦は、「亮に、『しゃべるな』って言う方がどうかしてるぜ。


覚悟は出来てるよ」と、呆れていた。


すると冬だと言うのに、


店内でTシャツ姿の色黒の女性店員が、


「亮の話だと近所のガキ共が、『大滝リンクには妖精が住んでいて、


兄ちゃんはその妖精に惚れちゃったらしい』と、


聞いてるけどその子の素性分ったの」と、


尋ねると竜彦は、「ああ美紀さん、


実はあれから偶然出くわして、訳ありなんだよ」と、


告げると美紀は頷いて、「あんなボロボロのリンクで、


ユニホーム着て練習しているスケーターなんて、


訳ありに決まってるでしょ」と、念を押した。


牧田は竜彦に、「どんな訳が有るんだよ」と、尋ねた。


竜彦は、「言わないよ。


話を広められても、彼女が困るだけだから」と、口を摘むんだ。


美紀、「大方どこかで挫折したスケーターが、


挫折した姿を見られたく無いけど、密かにまた羽ばたきたくて、


人気の無いリンクを見つけて、


滑っていたとかでしょう」と、女の勘が冴えた。


それを聞いた竜彦は、「俺の口からは何も言えないよ。


ただ深い訳が有る様だが、あえて深くは聞かなかった」と、


告げると店から出て行った竜彦であった。


それを見た牧田と美紀は、


負い目を感じる様な眼差しでいたのだった。


その夜、竜彦は行き付けのダーツバーのカウンターで、


酒を飲んでいた。


その横には真理が居た。


竜彦はウイスキーのロックを飲みながら、考え事をしていた。


そんな竜彦に真理は、「気にしてるんだ」と、問いかけると、


竜彦は、「何を」と、聞き返した。


真理はカクテルを呑みながら、「妖精さん」と、答えた。


竜彦は否定もせずに、「ああ、訳が有るらしいが、


かなり重症らしい」と、軽く答えた。


その事に対し真理は、「体がそれとも心が」と、


問いかけると竜彦は、「両方かもな」と、両手を後頭部に回した。


真理、「あれから一人で、スケート行ったんだ」と、


尋ねると竜彦は後頭部に両手を回しながら、「いや、


偶然十六号線の、中浜の交差点に在るコンビニに寄ったら、


そこでレジをしていて、その時は何も言わず、


俺は外でタバコを吸っていたら、


あの子が店から出て来て、話し掛けて来たんだ。


名前は中原 玲菜十九才で、


故郷は名古屋で、地元でアイススケートを、


遣っていたらしい」と、言う話に真理は頷いて、「らしいか。


惚れたねと、言うより惚れられたね」と、確信を得た。


竜彦はその時、何も言わずウイスキーを 一口呑んだ。


真理、「その子誘わなかった」と、


問いかけると竜彦は、「どんな風に」と、逆に問いかけた。


それを耳にした真理は、「竜彦確信しているんだ、惚れられた事」。


竜彦、「別に」と、軽くあしらった。


真理、「最初は妖精の縄張りに入って来た、


若い男と連れ添いの子供がはしゃいでいる姿を見て、


妖精はその姿を見て、楽しそうだから自分も加わりたくて、


その周りを滑り様子を伺っていた。


妖精ははしゃぎ、その優美な姿を見せて翻弄させた。


調子付いて自信が無かった技を御披露したが、舞えなかった。


その時、見ていた優しい男性から手を差し伸べられた」。


竜彦、「彼女は俺に告げたよ。


今現在働いている掛け持ちのバイトの場所を」と、


呟くと真理は、「妖精に惚れられたか、


優しい絵描きにね」と、呟いた。


竜彦はその時微笑んで、


「噂が広まらなければ良いがな」と、やはり呟いた。


今宵浜では、二人の愛の行方を期待するかの様に、


巷では噂の二人に成るのであった。



                          (5)

更新日:2013-01-23 10:17:47

  • Twitter
  • LINE
  • Facebook

★ アイス エルフィン (氷の上のやんちゃな妖精)