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第5話「カフェ」

「ご注文が決まりましたら
 そちらのベルを押してお呼びください」

店員さんが、行儀よくお辞儀をして
奥のほうに戻っていった。

「んー・・・」

真剣にメニューを見つめて
なにやら、唸ってる。

『・・・ふっ』

そんな素直な姿に
つい、笑みがもれた。

「・・・よーし!
 チョコバナナパフェ!」

なぜか意気込んで、
俺に宣言をした。

『おっけ(笑)』
「龍くんは?」

こんな真っ直ぐで馬鹿正直な人
初めて見た。

『コーヒーでいっかな』
「え、嘘。
 ・・・ごめん、あたしばっか」

しゅんとして、メニューを閉じる。

『いや、お礼なんだから
 平気だって』
「やっぱ優しい」

どこか嬉しそうに
西野さんは、さっきとは雰囲気の違う

優しく穏やかに微笑んだ。

『・・・ベル、押して?』
「あ、うん」

インターホンのような音が鳴り響いた。

駆け足で来る店員さんに注文を済ませると
時間が経っても、なかなか商品はこない


もう少し
まだ、西野さんといられそうな予感がして

また静かに、表情が緩んだ。

更新日:2013-02-12 22:05:51

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