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小説

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できた末っ子

テミンが韓国に帰って2週間。

だいぶ宿舎での生活も慣れ、事務所のレッスンにも顔を出すようになった。

入院中にせっかくだからとブロードウェイのスタジオでダンスのレッスンを受けていたテミンは、そのままステージに上がっても問題ないような気さえする。
久々にテミンのダンスを見た講師があとは振付けを覚えるだけだと言っていたので、早々に復帰という話も上がっていた。

しかし、そうとんとん拍子に話は進まない。

復帰に向けて仕事を教えようとオニュがテミンを連れて行った自分の仕事先。
その独特の緊張感がテミンの不安を煽ってしまったらしく、途中からはオニュの言葉が耳に入らず俯いて押し黙るばかり。
そのまま宿舎に帰ると同時に熱を出して、1週間も寝込んでしまった。

その後も何度か試みたメンバーの仕事先見学はどれも失敗に終わり、気付くとカレンダーは6月に変わって夏の季節に。
すると痺れを切らしたように事務所側から体調が戻ったのならテミンを無理にでも引っ張り出すと言われ、新曲の発売に合わせてテミンもステージに立つことになった。

今日はずっとレッスン室で通していた新曲のミュージックビデオの撮影。
何度も衣装を替え、メイク直しながら撮影が進む。

「テミン、大丈夫?」

「うん…」

青い顔をしたテミンを隣で心配そうに見つめるのはジョンヒョン。
仕事の間は、基本的にジョンヒョンがずっとテミンの側に付いている。

その様子を見ながら、キボムが大きくため息をついた。
隣にいたミノが首を傾げると、キボムは本当なら場所が交換しているはずのジョンヒョンとミノを交互に見詰める。

「なんだかなー…」

「どうした?」

「…やっぱりおかしい」

「ん?」

「絶対おかしい。何でミノじゃなくてジョンヒョニヒョンがあそこにいるわけ?テミンの隣。だいたい、ジョンヒョニヒョンはこっちにいるはずなのに。」

別に自分の恋人を取られたとか、そういう話ではない。
それに、ジョンヒョンが口では色々言っていてもテミンを落とそうなんて気は全くないのも分かっている。

「あー、でもまあ、今のテミンはジョンヒョニヒョンがいないと困るっていうか…」

「ミノはそれでいいわけ?このままだとずっと…」

「いいよ。何とかしたくても、俺も今は無理。」

はっきりとそう言われてしまっては、言い返すこともできない。


ふと、ジョンヒョンが言っていた言葉を思い出した。

自分を慕うのは、ただ一緒にいた記憶が誰よりも長いから。
生活に慣れてきただけで、本当は心なんて少しも開いていない。

それはこの先も変わらないと思うけれど、ミノが正面から目を逸らすことなく向き合えるようになるまでは自分が側にいようと思う。

その言葉に甘えるように、そして現実から逃げるように、ミノはテミンを避けている。

「早く助けてあげないと、なんかまずい気がするけどな…」

撮影の順番が回ってきて立ち上がったミノの後ろ姿に、キボムはそう呟いた。


更新日:2013-01-22 01:00:20

夢がさめたら 【君と過ごした最後の夏 続編】