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「さっき、夢見てたんだ」

クリスマスのイルミネーションで輝く道を走る車の中、テミンが独り言のように呟いた。

「どんな夢?」

「ミノヒョンと一緒にいる夢。忘れちゃったけど、楽しくて起きたくなかったのに…」

「起こさないほうが良かった?」

「そうじゃなくて、起こされたくないくらい楽しい夢だったの。どんなだったかな…」

思い出そうと難しい顔をするテミンを見てミノは苦笑する。
夢に出てきたなんて言われたのは嬉しいけれど、そう簡単に内容が思い出せるとは思えない。

「そんな、無理矢理思い出そうとしても無理だよ。」

「楽しかったのにな…」

一瞬寂しそうな顔をしたものの、テミンはすぐに顔を上げてにこっと笑った。

「でもいいや。今のほうが楽しいもん」

「そう?」

「うん」

ミノが視線を前から少しだけ逸らすと、テミンが虚ろな目で幸せそうな顔をしていた。

「…なんか、夢見てるみたい」

幸せすぎて、夢なのか現実なのか分からなくなってしまいそうだ。

「テミン…どうした?眠い?」

「ううん…」

首を振るけれど、眠気に逆らえず瞼が重くなり始めている。

昨晩、ミノに贈ろうと思っていた曲を何度も書き直していたら、寝るのがすっかり遅くなってしまった。
数日前までは病室で一日中寝ていたので、さっき寝たばかりだというのにまた夢の中に引きずり込まれそうだ。

「眠いなら少し遠回りして行くから。眠っていいよ」

「ヒョン…、起こしてくれる……?」

「うん。ちゃんと起こすから着くまで寝てろ。な?」

ハンドルから片手を伸ばして頭を撫でれば、「ん…」と小さく返事をしてすぐに寝息を立て始める。

遠回りなんてせずにオニュとジョンヒョンとキボムが食事をしている店に来たミノは、テミンを起こさないように静かに車を停めた。
3人は日付が変わるまで店を出ないだろうし、1時間くらいこのまま寝かせておこうと自分が着ていたコートを優しく肩に掛ける。

「テミン、…愛してる」

面と向かって言うにはまだ少し照れくさい言葉。
可愛い寝顔にふっと頬を緩めたミノは、そう言ってテミンの額にそっと口付けた。



『ミノヒョン…?』

夢の中、「愛してる」と言って額に口付ける大好きな人。


この夢がさめたら、どんな話をしよう。
笑い合って、時には泣いて、同じ月日を過ごして一緒に年を重ねたい。

この世で誰よりも愛するあなたと…。


-End-


更新日:2013-03-14 18:05:49

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夢がさめたら 【君と過ごした最後の夏 続編】