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毎晩、夜が明ける時間になろうとベットの脇に座って自分が眠るまで毛布の上からぽんぽんと肩のあたりを優しく叩いてくれるミノを、テミンは今日も静かに見上げた。

何度いいと言っても先に寝ようとはしないし、早く寝てもらおうと寝たふりをしてもなぜかミノには起きているとバレてしまう。

最初は戸惑ったのと申し訳ないのとで逆に寝付けなかったけれど、そんなのはほんの数日。
今のテミンにとってミノは、一緒にいるとどことなく落ち着ける兄だ。

まだ性格を掴みきれていないミノには、驚かされることが沢山ある。
というよりも、いつも心の中を見透かされているような気がする。
それは決して嫌な感覚ではなくて、どちらかといえば、ミノなら何も言わなくても分かってくれるという安心感が大きかった。


最近は寝不足が原因でずっと頭が重くて、食欲もない。
口が裂けても誰かの前では言えないけれど1日でいいから休みたいと思っていると、頭の上からミノの声が降ってきた。

「明日、仕事行けそう?」

偶然なのか、それともやっぱりミノには自分が考えていることが分かるのか。
何とも言えないタイミングで、いつも声を掛けてくれる。

「うん」

癖のように浮かべた作り笑いも、ミノには通用しない。

「テミン、俺の前では無理して笑うなって言ってるだろ?」

ちょっと困ったように笑って頭を撫でられ、テミンは笑顔を消した。

本当は何もやりたくない。

退院して仕事を始めてから今日まで、必死に駆け抜けてはきたけれど。
毎日毎日もう無理だと思うのに、気付けば仕事場にいてカメラやファンの前に立っている自分がいる。
笑ってほしいと散々言われて、言われれば言われるほど顔が強張っていくのが嫌というほど分かった。

自分は、何がやりたくてこの世界に足を踏み入れたのだろう。
何が楽しくて、あんな風に笑っていたんだろうか。

今の自分にとっては、一日の大半を占める仕事の時間が苦痛でしかない。
それでも何とか続けているのは、4人の兄が優しく支えてくれているからだ。

でもそんな4人の存在すら、最近は少し辛い。

こんなに優しくしてもらっているのに、そしてしっかりと支えてくれているのに、今すぐここから逃げてしまいたいと思っている。
そんなことを考えてしまう自分が嫌で、優しくされると申し訳なさと不甲斐なさで涙が出そうになった。

「…行くよ。ちゃんと行く。」

それ以外、選択肢なんてないから。

「そっか。無理そうなら言えよ?マネヒョンに相談してみるから。」

優しい笑顔に思わず言ってしまいそうになるけれど、テミンは言葉を飲み込んで視線を合わせず頷いた。


更新日:2013-02-03 21:29:42

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