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自分たちだけが出演するわけではないのでそう簡単に空き部屋が見付からず、ようやく用意してもらえた部屋はスタッフの行き来が多い廊下沿い。
誰かが入ってくることはないので自分たちの楽屋よりは落ち着けるが、廊下からは慌ただしい足音が聞こえる。

「気にするな…って言っても気になるか。」

困ったものだと笑いながら、ジョンヒョンは座っているテミンの耳を両手で塞いだ。
お互いに立っているとテミンを見上げる形になってしまうけれど、自分だけが立っていれば手も疲れない高さでちょうどいい。

「まだ外の音聞こえる?」

首を振ったテミンの頬に少し触れる手が熱くて、心配で顔を覗き込んだ。

「熱上がったかな…。起きてて辛くない?」

「うん…」

「調子悪かったら我慢しないで言えよ?」

小さく頷いたテミンは、熱で潤んだ目でジョンヒョンを見上げる。

「…ジョンヒョニヒョン、なんか歌って」

「歌?んー、何がいい?」

「何でもいいから。お願い…」

テミンがこんなことを頼んでくるのは珍しい。
適当に落ち着いたバラードを選んで口ずさむと、テミンは安心したように目を閉じた。

ニューヨークにいた頃、一応作詞作曲の勉強でという建前で韓国を出てきたので、よくテミンの隣で思い浮かんだメロディーを口ずさんでは五線紙に書き込んでいたのを思い出す。
そういえば、曲作りに夢中になっている途中、気付くといつもテミンは夢の中だった気がする。

案外、テミンにとっては子守歌代わりだったのかもしれない。

一曲歌い終えた後に耳を塞いでいた手を離してみても瞼は閉じられたままで、ようやくちゃんと眠りについたと分かり、ジョンヒョンはホッと胸を撫で下ろした。


更新日:2013-01-26 23:19:19

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