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第9話『侵略者』
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「遊真、ちょっと良いか?」
ディオールにデュエルを挑まれた翌日、遊真が起きてガレージに降りると、遊星が真剣な面もちで近付いてきた。
「……おはようございます。 遊星さん」
「あぁ。 それより、これを見てくれ」
そう言って遊星は一枚の紙を遊真に渡した。
遊真が入手した生物の解析結果のようだ。
遊星のガレージでも、ある程度の事は調べられると知った時は驚いたものだ。
「これは……」
紙には、生物の各種データと共に一枚のカードの画像が添付されていた。
「……【惑星からの物体A】?」
「あぁ、そのカードとそっくりなんだ。 あと、このカードとも」
遊星はもう1枚紙を遊真に手渡した。
そこには、同様に【侵食細胞「A」】という魔法カードが印刷されていた。
どちらとも遊真が見た生物と同じ絵が描かれているが、足が生えている惑星からの物体A】の方が正しいようだ。
「効果は相手モンスターのコントロールを得るというもの。 恐らく、それを人間に見立てて実行しているのだろう」
そんな事をやれる人種は、遊真の知る限り一つしかない。
「サイコ……デュエリスト……」
遊真の頭に、1人の青年が浮かんでくるが、そんなカードを使うデュエリストではないし。
彼の性格上、そのような卑怯な手は使ってこないだろう。
「俺の知り合いに、サイコデュエリストがいる。 さっきこっちに来るように伝えた。 昼前には此処に来るだろう」
遊星は「とりあえず」と付け足すと、朝食を机の上に並べた。
「とりあえず、客が来る前に朝食を済ませておこう」
慌てて遊真も、「手伝います」といって朝食を並べていく。
トーストにハムエッグと、至ってシンプルなメニューだ。
「……ジャックとクロウは?」
「クロウはもう配達へ行った。 ジャックはまだ寝てるんだろう」
遊星は苦笑すると、椅子に座って朝食を食べ始めた。
遊真もそれにならい、椅子に座ってハムエッグに手をつけた。
遊真はハムエッグをトーストに乗せて食べる人間だ。
器用にトーストに乗せ、かぶりつく。
二人は無言で朝食を取っていると、いきなり扉が開き、小さな人影が2つガレージに入ってきた。
「遊星~! 遊びに来たよ!」
と、元気よく緑の髪を一つに縛った少年が、遊星に向かって走ってきた。
「おはよう、遊星」
少年に続いて入ってきたのは、緑の髪を2つに束ねた少女。
双子なのか、顔がそっくりで、服も色違いではあるが、似たようなデザインの服を着ている。
「龍亜、龍可。 どうした、こんな早い時間に」
「アキ姉ちゃんも来るって言うから、早く来たんだぁ」
笑顔で少年は言うが、急に凄まじい音が鳴り響く。
「もう、龍亜ったら……朝ご飯も食べずに出てきたんだから」
呆れた顔で少女は言うと、溜め息を吐いた。
「へへへ、遊星に会えるって思うとさぁ」
少年は恥ずかしそうに頭を掻く。
遊星は苦笑すると、テーブルにあったトーストを龍亜と呼ばれた少年に手渡した。
「食べると良い」
「え、いいの?」
少年は目を輝かせながら、トーストを貪った。
「龍可はどうだ?」
「私は良いわ、ありがとう」
少女は遊星にそう告げると、遊真をジッと見つめていた。
「アナタは?」
(遊真はその少女の綺麗な瞳に、心を奪われた、ってどうかなギース)
(うむ、中々良いんじゃないか?)
(……お前ら黙れ……)
遊真が鬱陶しそうに言うと、少女は驚いた顔を見せ、戸惑いがちに尋ねてきた。
「精霊の声が聞こえるの?」
今度は遊真が驚く番だった。
遊真がギース達と話すのは、他の人間には聞こえていないはずなのだ。
精霊と会話出来るようになって、初めてのことだ。
「楽しそうなモンスター達ね」
「……騒々しいだけだ」
遊真はそう言って、腰のデッキケースを睨んだ。
(HAHAHA天は我らに味方せりぃぃぃ)
(火計を必ずや成功させましょう)
最近、【不死武士】あたりがハマっている戦国ごっこの真っ最中のようなのだが。
全て会話が筒抜けなのか、少女がクスリと笑っているのが恥ずかしかった。
「私は龍可。 アナタは?」
「遊真……『神薙 遊真』だ」
少女に自分の名を告げると、遊真は恥ずかしさを紛らわせるように、トーストにかじり付いた。
(敵将討ち取ったりぃぃぃぃぃ!)
(……いい加減にしろ【不死武士】)
(拙者は討ち取られた側でござる。 討ち取ったのは【ダーク・グレファー】でござるよ遊真殿。 拙者だけ怒られるのは心外でござるよ)
(…………とりあえず【不死武士】、お前は後で【おろかな埋葬】百連発の刑に処す……)
(ひぃぃぃぃ)
少女は遊真の会話を、ずっと笑顔で聞いていた。
「遊真、ちょっと良いか?」
ディオールにデュエルを挑まれた翌日、遊真が起きてガレージに降りると、遊星が真剣な面もちで近付いてきた。
「……おはようございます。 遊星さん」
「あぁ。 それより、これを見てくれ」
そう言って遊星は一枚の紙を遊真に渡した。
遊真が入手した生物の解析結果のようだ。
遊星のガレージでも、ある程度の事は調べられると知った時は驚いたものだ。
「これは……」
紙には、生物の各種データと共に一枚のカードの画像が添付されていた。
「……【惑星からの物体A】?」
「あぁ、そのカードとそっくりなんだ。 あと、このカードとも」
遊星はもう1枚紙を遊真に手渡した。
そこには、同様に【侵食細胞「A」】という魔法カードが印刷されていた。
どちらとも遊真が見た生物と同じ絵が描かれているが、足が生えている惑星からの物体A】の方が正しいようだ。
「効果は相手モンスターのコントロールを得るというもの。 恐らく、それを人間に見立てて実行しているのだろう」
そんな事をやれる人種は、遊真の知る限り一つしかない。
「サイコ……デュエリスト……」
遊真の頭に、1人の青年が浮かんでくるが、そんなカードを使うデュエリストではないし。
彼の性格上、そのような卑怯な手は使ってこないだろう。
「俺の知り合いに、サイコデュエリストがいる。 さっきこっちに来るように伝えた。 昼前には此処に来るだろう」
遊星は「とりあえず」と付け足すと、朝食を机の上に並べた。
「とりあえず、客が来る前に朝食を済ませておこう」
慌てて遊真も、「手伝います」といって朝食を並べていく。
トーストにハムエッグと、至ってシンプルなメニューだ。
「……ジャックとクロウは?」
「クロウはもう配達へ行った。 ジャックはまだ寝てるんだろう」
遊星は苦笑すると、椅子に座って朝食を食べ始めた。
遊真もそれにならい、椅子に座ってハムエッグに手をつけた。
遊真はハムエッグをトーストに乗せて食べる人間だ。
器用にトーストに乗せ、かぶりつく。
二人は無言で朝食を取っていると、いきなり扉が開き、小さな人影が2つガレージに入ってきた。
「遊星~! 遊びに来たよ!」
と、元気よく緑の髪を一つに縛った少年が、遊星に向かって走ってきた。
「おはよう、遊星」
少年に続いて入ってきたのは、緑の髪を2つに束ねた少女。
双子なのか、顔がそっくりで、服も色違いではあるが、似たようなデザインの服を着ている。
「龍亜、龍可。 どうした、こんな早い時間に」
「アキ姉ちゃんも来るって言うから、早く来たんだぁ」
笑顔で少年は言うが、急に凄まじい音が鳴り響く。
「もう、龍亜ったら……朝ご飯も食べずに出てきたんだから」
呆れた顔で少女は言うと、溜め息を吐いた。
「へへへ、遊星に会えるって思うとさぁ」
少年は恥ずかしそうに頭を掻く。
遊星は苦笑すると、テーブルにあったトーストを龍亜と呼ばれた少年に手渡した。
「食べると良い」
「え、いいの?」
少年は目を輝かせながら、トーストを貪った。
「龍可はどうだ?」
「私は良いわ、ありがとう」
少女は遊星にそう告げると、遊真をジッと見つめていた。
「アナタは?」
(遊真はその少女の綺麗な瞳に、心を奪われた、ってどうかなギース)
(うむ、中々良いんじゃないか?)
(……お前ら黙れ……)
遊真が鬱陶しそうに言うと、少女は驚いた顔を見せ、戸惑いがちに尋ねてきた。
「精霊の声が聞こえるの?」
今度は遊真が驚く番だった。
遊真がギース達と話すのは、他の人間には聞こえていないはずなのだ。
精霊と会話出来るようになって、初めてのことだ。
「楽しそうなモンスター達ね」
「……騒々しいだけだ」
遊真はそう言って、腰のデッキケースを睨んだ。
(HAHAHA天は我らに味方せりぃぃぃ)
(火計を必ずや成功させましょう)
最近、【不死武士】あたりがハマっている戦国ごっこの真っ最中のようなのだが。
全て会話が筒抜けなのか、少女がクスリと笑っているのが恥ずかしかった。
「私は龍可。 アナタは?」
「遊真……『神薙 遊真』だ」
少女に自分の名を告げると、遊真は恥ずかしさを紛らわせるように、トーストにかじり付いた。
(敵将討ち取ったりぃぃぃぃぃ!)
(……いい加減にしろ【不死武士】)
(拙者は討ち取られた側でござる。 討ち取ったのは【ダーク・グレファー】でござるよ遊真殿。 拙者だけ怒られるのは心外でござるよ)
(…………とりあえず【不死武士】、お前は後で【おろかな埋葬】百連発の刑に処す……)
(ひぃぃぃぃ)
少女は遊真の会話を、ずっと笑顔で聞いていた。
更新日:2014-09-01 00:34:44