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「免許の事は知らなかった……」
「あぁ? サテライト全域に伝えたはずだぞ?」
遊真は、自分が収容所から出てきたばかり、という理由を説明した。
無論、賭デュエルについては伏せてはあるが。
「なるほどなぁ……」
牛尾は腕を組みながら何度も頷くと、D-ホイールに備え付けられている通信機を取り出した。
「あー牛尾だ。 免許証発行の手続きをしといてくれ。 取得志願者を見つけた」
そう言って何度かやり取りをし、牛尾は通信機を切り、遊真の方を見た。
「手続きをやっといてくれるそうだぁ。 セキュリティ本部に来てくれれば、免許証を発行してやる」
その発言に、遊真は目を見開いた。
「良い……のか?」
「一応、俺の推薦ってことになってるからな。 問題起こすんじゃねぇぞ?」
そう言いながら、ニヤリと笑う牛尾。
遊真は苦笑し、牛尾に礼を言おうとしたその瞬間である。
「お、牛尾じゃねぇか! なにやってんだぁ?」
デュエルレーンではない一般道から、一人のD-ホイーラーが牛尾に声を掛けた。
その声に遊真は聞き覚えがあった、それは忘れるはずもない人物の一人。
「フン……どうせ下らない職務質問とやらだろう」
呆れたように言う青年の声にも、遊真は聞き覚えがある。
そして……。
「やめろ、2人とも。 仕事中だ」
2人を諫める声の主は、遊真が探していた人物。
数年前、遊真を悪漢から救い出し、デュエルを教えてくれた恩人。
「……遊星さん!!」
遊真は、ヘルメットを脱ぐと、力の限り叫んだ。
牛尾にしか注目していなかったのだろう、3人は驚愕の表情を浮かべ、一斉に声を上げた。
「「「遊真ッ!?」」」
その反応を見て、遊真は満足そうな笑みを浮かべた。
第6話……完
更新日:2013-03-10 12:43:33