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ガタンッと特別観覧席に座っていたクロッシェは椅子が倒れるのもお構い無しに、勢いよく立ち上がった。
視線の先には、勝負に負けてうなだれている女性の姿がある。
「だから言ったろ……『アイツは勝つ』ってよ」
笑みを浮かべ、仮面の男は言う。
クロッシェはしばらく悔しさに震えていたが、それを止めると取り繕ったような笑みを浮かべた。
「流石はサティスファクションと言ったところか」
「サティスなんたらなんて関係ねぇよ。 アイツの実力だ」
そう言うと、仮面の男はクロッシェは踵を返して扉へと向かった。
「どこへ行くのかね」
「ハッ、決まってんだろ? 野暮な事聞くなよ」
仮面の男はドアノブに手を掛け、回す。
「あっ、勝ったんだし、約束は守ってくれるんだよな?」
嫌味を言うように、仮面の男は振り向いた。
クロッシェは肩を竦め、言葉を返す。
「あぁ、その点は安心してくれたまえ。 彼には『スケープゴート』として役に立って貰うとするよ」
仮面の男はニヤリと笑うと、扉を出て行った。
「さて、私もお役目を果たすとするかね」
溜め息を吐くと、クロッシェも扉を出て、決着の着いた舞台へと足を運んだ。
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『勝者は遊真ぁぁぁ! 見事ロックカードをすり抜け、勝利をもぎ取ったぁぁぁぁぁ』
歓声が湧く会場の中、遊真はしぐれへと近付いていった。
「【マッハ・ストライカー】がいなければ勝てなかった……満足させてもらった」
そう言って遊真はしぐれに握手を求める。
「律儀なのねぇ。 そんな子も好みよ」
そう笑いながら、握手に応じるしぐれ。
遊真はしぐれとの握手を終えると、周囲を見回す。
探しているのは当然、クロッシェである。
「お見事、流石は彼のサティスファクションの後継者だ」
入場ゲートから、見覚えのある白いスーツの男が、拍手の音を響かせながら姿を現した。
その姿を確認した遊真は、怨敵を見るような目で睨み付けた。
「……何故俺がサティスファクションと関わりがあるのを知っている?」
「私はここの企画主任だよ? 参加者全員の素性を把握するのは当たり前だろう?」
さも、当然だろうと言わんばかりに言うクロッシェに、遊真は舌打ちをする。
「とりあえず、おめでとうと言わせてもらうよ『神薙 遊真』君。 晴れて君は『決闘場』復帰の権利を得た」
微笑みながらクロッシェは言い、胸ポケットからカードを取り出すと、遊真に差し出した。
当然、デュエル前に預けたギースである。
(待たせたな……ギース)
(良くやったな……遊真)
ギースは遊真に労いの言葉を掛けると、疲れているのか押し黙ってしまった。
「では、明日からは今まで通り『決闘場』に参加してくれて構わない。 牢も自分の牢に戻ってくれたまえ」
言うだけ言って、クロッシェは踵を返して舞台を後にした。
「あらあら、主任さんたらご機嫌斜めねぇ」
妖艶に笑いながら、しぐれはクロッシェの後ろ姿を見送った。
「……みたいだな」
顔は笑っていたが、何か苛立っているように遊真も感じた。
「さーて、私も自分の牢に戻りましょうかね」
そう言ってしぐれは背伸びすると、遊真の方に向き直った。
「それじゃ頑張ってねウサギさん? 寂しくなったら、いつでもいらっしゃいな、可愛がってあげる」
遊真はそう言う彼女を見送り、自らも入場ゲートを通って外へと出るのだった。
4話……完
ガタンッと特別観覧席に座っていたクロッシェは椅子が倒れるのもお構い無しに、勢いよく立ち上がった。
視線の先には、勝負に負けてうなだれている女性の姿がある。
「だから言ったろ……『アイツは勝つ』ってよ」
笑みを浮かべ、仮面の男は言う。
クロッシェはしばらく悔しさに震えていたが、それを止めると取り繕ったような笑みを浮かべた。
「流石はサティスファクションと言ったところか」
「サティスなんたらなんて関係ねぇよ。 アイツの実力だ」
そう言うと、仮面の男はクロッシェは踵を返して扉へと向かった。
「どこへ行くのかね」
「ハッ、決まってんだろ? 野暮な事聞くなよ」
仮面の男はドアノブに手を掛け、回す。
「あっ、勝ったんだし、約束は守ってくれるんだよな?」
嫌味を言うように、仮面の男は振り向いた。
クロッシェは肩を竦め、言葉を返す。
「あぁ、その点は安心してくれたまえ。 彼には『スケープゴート』として役に立って貰うとするよ」
仮面の男はニヤリと笑うと、扉を出て行った。
「さて、私もお役目を果たすとするかね」
溜め息を吐くと、クロッシェも扉を出て、決着の着いた舞台へと足を運んだ。
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『勝者は遊真ぁぁぁ! 見事ロックカードをすり抜け、勝利をもぎ取ったぁぁぁぁぁ』
歓声が湧く会場の中、遊真はしぐれへと近付いていった。
「【マッハ・ストライカー】がいなければ勝てなかった……満足させてもらった」
そう言って遊真はしぐれに握手を求める。
「律儀なのねぇ。 そんな子も好みよ」
そう笑いながら、握手に応じるしぐれ。
遊真はしぐれとの握手を終えると、周囲を見回す。
探しているのは当然、クロッシェである。
「お見事、流石は彼のサティスファクションの後継者だ」
入場ゲートから、見覚えのある白いスーツの男が、拍手の音を響かせながら姿を現した。
その姿を確認した遊真は、怨敵を見るような目で睨み付けた。
「……何故俺がサティスファクションと関わりがあるのを知っている?」
「私はここの企画主任だよ? 参加者全員の素性を把握するのは当たり前だろう?」
さも、当然だろうと言わんばかりに言うクロッシェに、遊真は舌打ちをする。
「とりあえず、おめでとうと言わせてもらうよ『神薙 遊真』君。 晴れて君は『決闘場』復帰の権利を得た」
微笑みながらクロッシェは言い、胸ポケットからカードを取り出すと、遊真に差し出した。
当然、デュエル前に預けたギースである。
(待たせたな……ギース)
(良くやったな……遊真)
ギースは遊真に労いの言葉を掛けると、疲れているのか押し黙ってしまった。
「では、明日からは今まで通り『決闘場』に参加してくれて構わない。 牢も自分の牢に戻ってくれたまえ」
言うだけ言って、クロッシェは踵を返して舞台を後にした。
「あらあら、主任さんたらご機嫌斜めねぇ」
妖艶に笑いながら、しぐれはクロッシェの後ろ姿を見送った。
「……みたいだな」
顔は笑っていたが、何か苛立っているように遊真も感じた。
「さーて、私も自分の牢に戻りましょうかね」
そう言ってしぐれは背伸びすると、遊真の方に向き直った。
「それじゃ頑張ってねウサギさん? 寂しくなったら、いつでもいらっしゃいな、可愛がってあげる」
遊真はそう言う彼女を見送り、自らも入場ゲートを通って外へと出るのだった。
4話……完
更新日:2013-03-06 23:50:53