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第4話『更なる音速』
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「……出来た」
窓もなく、昼か夜かも分からない部屋の中で、遊真は呟いた。
デッキ構築のために、手錠を外してもらってから、延々とデッキをいじっていたのである。
(どうだ、遊真? 満足のいくデッキは出来たか?)
ギースが尋ねてくる。
(あぁ……)
遊真は頷くと、デッキケースにデッキを収め、一息吐いた。
思えば、一睡もしていない。
(一寝入りしておくか……)
そう思った時、バタンとドアが開き、看守が入ってきた。
「囚人番号LG3667! 出番だぞ!」
遊真は溜め息を吐くと、看守へと近付いてデュエルディスクを受け取る。
看守は、遊真がディスクを装着するのを確認すると歩き出し、『決闘場』へと移動した。
いつものように、門を潜り抜けようとしたとき。
「頑張れよ」
看守がそう声を掛けてきた。
珍しい出来事に、遊真は言葉を返す事が出来なかった。
遊星やジャックの活躍で、シティとサテライトの意識が変わり始めた事を、遊真は知らないのだ。
「……言われなくても、俺はただ満足出来るデュエルをするだけだ」
そう言いながら、遊真は微笑んだ。
(ゆ、遊真が笑ってる……不気味だ)
(……黙れマッハ……)
冷やかしてくる【マッハ・シンクロン】を一蹴し、遊真は『決闘場』へと足を進めた。
進んだ先には、対戦相手と思われる女性と、クロッシェが立っていた。
クロッシェはマイクを持ち、口を開いた。
『皆様、今宵も当決闘場にお越しいただきありがとうございます。 私は当決闘場企画主任の『クロッシェ=ドレスナー』と申します』
仰々しく会釈するクロッシェ。
『今宵は、先日この場で暴力行為を働いた囚人、74連勝中の『神薙 遊真』の、生き残りを賭けたデュエルです』
いつもなら、歓声をあげるはずの観客達が、何も反応が無かった。
クロッシェの放つ威圧感が、それを許さないのだ。
物腰は柔らかい優男、しかし放つ言葉一つ一つが心臓を鷲掴みにするように重いのだ。
『勝てば今まで通りデュエル、負ければ永久追放、まさに崖っぷちのデュエルをお楽しみ下さい』
そう言って、クロッシェは退散しようとしたが、思い出したかのように、こう言った。
『今回は、ただのデュエルではなく、ルール違反を行った遊真君には、一つハンデを負ってもらいます』
「ハンデ……だと?」
遊真がオウム返しをすると、クロッシェは微笑みながら言う。
『彼の切り札【ギガンテック・ファイター】を使用禁止とします』
(なんだと!?)
その一言に、ギース、そして観客席からどよめきの声が上がった。
そして、遊真に近付いてくると、手を突き出してきた。
「念のため預からせてもらおうか」
顔は笑っていたが、相手の行動を制限させるような迫力が、そこにはあった。
遊真は呻きながら、デッキケースを開けると、ギースを取り出した。
(なっ!? 奴の口車に乗るな遊真!)
(心配するな……俺は勝つ)
いつになく強い口調に、ギースはしばらくなにも言わなかったが、意を決したように言った。
(遊真……わかったお前を信じよう!)
(すまない……)
ギースに謝罪しながら、カードをクロッシェへと渡した。
「確かに。 破ったりはしないから安心したまえ」
「……当たり前だ」
カードを受け取ると、クロッシェはギースを胸ポケットに入れ、会場から去っていった。
『主任から話があったように、今回は遊真の復活戦だぁぁぁ!』
静まり返った場を盛り上げようと、司会が叫び声を上げた。
司会の思惑が成功したのか、観客席からは大きな歓声が上がった。
そんな喧騒の中、遊真と対峙している女性が口を開いた。
「こんにちは、よろしくね坊や」
歳の方は二十後半といったところか。
ブロンドの髪に、白い肌、囚人服からでも分かるボディラインは、見るものの目を惹いた。
彼女の放つ妖艶な雰囲気も相まって、彼女の周りだけが別世界のような空気が流れていた。
(すっごいナイスなボディだね遊真)
テンション高く【マッハ・シンクロン】が言う。
確かに、出るところは出ているが。
(別に……興味はない。 俺の興味は俺を満足させてくれるか否か、それだけだ)
遊真はそう返すと、デュエルディスクを起動させる。
「あらら、やる気満々なのかしら。 焦っちゃって……もう可愛いわねぇ」
フフフと笑う女性。
なにやらその視線に、遊真は背筋が寒くなったのを感じた。
女性はディスクを起動させると、口を開いた。
「……出来た」
窓もなく、昼か夜かも分からない部屋の中で、遊真は呟いた。
デッキ構築のために、手錠を外してもらってから、延々とデッキをいじっていたのである。
(どうだ、遊真? 満足のいくデッキは出来たか?)
ギースが尋ねてくる。
(あぁ……)
遊真は頷くと、デッキケースにデッキを収め、一息吐いた。
思えば、一睡もしていない。
(一寝入りしておくか……)
そう思った時、バタンとドアが開き、看守が入ってきた。
「囚人番号LG3667! 出番だぞ!」
遊真は溜め息を吐くと、看守へと近付いてデュエルディスクを受け取る。
看守は、遊真がディスクを装着するのを確認すると歩き出し、『決闘場』へと移動した。
いつものように、門を潜り抜けようとしたとき。
「頑張れよ」
看守がそう声を掛けてきた。
珍しい出来事に、遊真は言葉を返す事が出来なかった。
遊星やジャックの活躍で、シティとサテライトの意識が変わり始めた事を、遊真は知らないのだ。
「……言われなくても、俺はただ満足出来るデュエルをするだけだ」
そう言いながら、遊真は微笑んだ。
(ゆ、遊真が笑ってる……不気味だ)
(……黙れマッハ……)
冷やかしてくる【マッハ・シンクロン】を一蹴し、遊真は『決闘場』へと足を進めた。
進んだ先には、対戦相手と思われる女性と、クロッシェが立っていた。
クロッシェはマイクを持ち、口を開いた。
『皆様、今宵も当決闘場にお越しいただきありがとうございます。 私は当決闘場企画主任の『クロッシェ=ドレスナー』と申します』
仰々しく会釈するクロッシェ。
『今宵は、先日この場で暴力行為を働いた囚人、74連勝中の『神薙 遊真』の、生き残りを賭けたデュエルです』
いつもなら、歓声をあげるはずの観客達が、何も反応が無かった。
クロッシェの放つ威圧感が、それを許さないのだ。
物腰は柔らかい優男、しかし放つ言葉一つ一つが心臓を鷲掴みにするように重いのだ。
『勝てば今まで通りデュエル、負ければ永久追放、まさに崖っぷちのデュエルをお楽しみ下さい』
そう言って、クロッシェは退散しようとしたが、思い出したかのように、こう言った。
『今回は、ただのデュエルではなく、ルール違反を行った遊真君には、一つハンデを負ってもらいます』
「ハンデ……だと?」
遊真がオウム返しをすると、クロッシェは微笑みながら言う。
『彼の切り札【ギガンテック・ファイター】を使用禁止とします』
(なんだと!?)
その一言に、ギース、そして観客席からどよめきの声が上がった。
そして、遊真に近付いてくると、手を突き出してきた。
「念のため預からせてもらおうか」
顔は笑っていたが、相手の行動を制限させるような迫力が、そこにはあった。
遊真は呻きながら、デッキケースを開けると、ギースを取り出した。
(なっ!? 奴の口車に乗るな遊真!)
(心配するな……俺は勝つ)
いつになく強い口調に、ギースはしばらくなにも言わなかったが、意を決したように言った。
(遊真……わかったお前を信じよう!)
(すまない……)
ギースに謝罪しながら、カードをクロッシェへと渡した。
「確かに。 破ったりはしないから安心したまえ」
「……当たり前だ」
カードを受け取ると、クロッシェはギースを胸ポケットに入れ、会場から去っていった。
『主任から話があったように、今回は遊真の復活戦だぁぁぁ!』
静まり返った場を盛り上げようと、司会が叫び声を上げた。
司会の思惑が成功したのか、観客席からは大きな歓声が上がった。
そんな喧騒の中、遊真と対峙している女性が口を開いた。
「こんにちは、よろしくね坊や」
歳の方は二十後半といったところか。
ブロンドの髪に、白い肌、囚人服からでも分かるボディラインは、見るものの目を惹いた。
彼女の放つ妖艶な雰囲気も相まって、彼女の周りだけが別世界のような空気が流れていた。
(すっごいナイスなボディだね遊真)
テンション高く【マッハ・シンクロン】が言う。
確かに、出るところは出ているが。
(別に……興味はない。 俺の興味は俺を満足させてくれるか否か、それだけだ)
遊真はそう返すと、デュエルディスクを起動させる。
「あらら、やる気満々なのかしら。 焦っちゃって……もう可愛いわねぇ」
フフフと笑う女性。
なにやらその視線に、遊真は背筋が寒くなったのを感じた。
女性はディスクを起動させると、口を開いた。
更新日:2013-03-06 23:39:21