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プロローグ
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俺は荒れ果てた街を独り彷徨っていた。
どこへ行くのか?
そんなものは知らない。
行く先など無いし、目的があるわけでもない。
そして帰る場所すらない。
俺の家は、『ゼロ・リバース』と呼ばれる災害で両親ごと吹き飛んだ。
俺だけは奇跡的に無事だったが、帰る家、優しかった両親を同時に失った。
そんな俺に残されたのは、カードデザイナーをしていた父が手掛けた数枚のカード。
まだ公式には発表されていないものだが、デュエルに使う事は出来るらしい。
まぁ、俺のデッキは『ゼロ・リバース』で消滅してしまったので、デュエルを出来るはずもなく、父の形見として身につけて歩いている。
ドンッ
何かにぶつかった。
下を向いて歩いていたからか、目の前に壁があることに気付かなかった。
ゆっくりと視線を上にずらすと、ぶつかったのは壁ではなかった。
「オイコラ餓鬼! どこ見て歩いてやがる」
いかにも柄の悪そうな男が立っていた。
謝ろうにも声が出なかったため、会釈だけしてその場を去ろうとするが、後ろから男に肩を掴まれ、地面に倒された。
「人にぶつかっておいて、詫びもねぇのかぁ?」
物凄い形相で睨まれたが、俺はただ俯くだけだ。
言い返す気力もない。
このまま果てるのも悪くない、そう思えさえした。
「気味の悪い餓鬼だぜ。 ん?おーデュエルモンスターズ持ってんじゃねぇか。 詫びとしてそいつをくれたら許してやっても良いぜ」
俺が手に持っていたカードを見て、男は言った。
世の中ではカードは高価で売買されている。
売って生活資金にでもするつもりだろう。
「……だ……」
「あぁん?」
「いやだ……」
こいつらは、父の形見、唯一無二のカード。
それを渡すわけにはいかない。
「テメェ!」
激昂した男は、殴り掛かってきた。
俺は目を閉じ、痛みの瞬間を待ったが、中々その瞬間は訪れなかった。
恐る恐る目を開けると、男の拳を受け止めている青年の姿があった。
「オイオイ、子ども相手に大人気ないんじゃねぇか?」
青い髪の青年は、拳を押し返しながらそう言った。
ノースリーブのジャケットに、額に巻いた鉢巻が印象的な青年だ。
「テ、テメェは!?」
「俺たちの縄張りで好き勝手やってくれんじゃねぇの? 俺たちへの宣戦布告と見なすぜ?」
「ひ、ひぃぃぃ」
青年がそう凄むと、男は足早に退散していった。
俺はその様をジッと見ているのだった。
「ったく……歯ごたえの無い奴だぜ。 こんなんじゃ満足出来ねぇな」
頭をボリボリと掻きながら、青年が俺の方を向き、手を差し伸べてきた。
「立てるか?」
俺は頷き、青年の手を取らず、一人で立って見せた。
それを見て青年は苦笑しながら手を引き、口を開く。
「ま、無事なら何よりだ」
俺はキョトンとした顔で青年の顔を見る。
「ん? どうした? どっか痛むか?」
俺は首を振り、答えた。
「なんで、助けた?」
今、俺が居る場所『サテライト』では、『ゼロ・リバース』によって街、交通機関等が遮断され、荒れ果てており。
それでも生き残っている人々は、自分の事で頭がいっぱいで、他人を助けようなどとは思わない。
今まで俺が彷徨い歩いていた時も、さっきのような奴は多かったが、助けてくれる人なんて居やしなかった。
俺の問いに、青年は「なんだそんなことか」とでも言うように答えた。
俺は荒れ果てた街を独り彷徨っていた。
どこへ行くのか?
そんなものは知らない。
行く先など無いし、目的があるわけでもない。
そして帰る場所すらない。
俺の家は、『ゼロ・リバース』と呼ばれる災害で両親ごと吹き飛んだ。
俺だけは奇跡的に無事だったが、帰る家、優しかった両親を同時に失った。
そんな俺に残されたのは、カードデザイナーをしていた父が手掛けた数枚のカード。
まだ公式には発表されていないものだが、デュエルに使う事は出来るらしい。
まぁ、俺のデッキは『ゼロ・リバース』で消滅してしまったので、デュエルを出来るはずもなく、父の形見として身につけて歩いている。
ドンッ
何かにぶつかった。
下を向いて歩いていたからか、目の前に壁があることに気付かなかった。
ゆっくりと視線を上にずらすと、ぶつかったのは壁ではなかった。
「オイコラ餓鬼! どこ見て歩いてやがる」
いかにも柄の悪そうな男が立っていた。
謝ろうにも声が出なかったため、会釈だけしてその場を去ろうとするが、後ろから男に肩を掴まれ、地面に倒された。
「人にぶつかっておいて、詫びもねぇのかぁ?」
物凄い形相で睨まれたが、俺はただ俯くだけだ。
言い返す気力もない。
このまま果てるのも悪くない、そう思えさえした。
「気味の悪い餓鬼だぜ。 ん?おーデュエルモンスターズ持ってんじゃねぇか。 詫びとしてそいつをくれたら許してやっても良いぜ」
俺が手に持っていたカードを見て、男は言った。
世の中ではカードは高価で売買されている。
売って生活資金にでもするつもりだろう。
「……だ……」
「あぁん?」
「いやだ……」
こいつらは、父の形見、唯一無二のカード。
それを渡すわけにはいかない。
「テメェ!」
激昂した男は、殴り掛かってきた。
俺は目を閉じ、痛みの瞬間を待ったが、中々その瞬間は訪れなかった。
恐る恐る目を開けると、男の拳を受け止めている青年の姿があった。
「オイオイ、子ども相手に大人気ないんじゃねぇか?」
青い髪の青年は、拳を押し返しながらそう言った。
ノースリーブのジャケットに、額に巻いた鉢巻が印象的な青年だ。
「テ、テメェは!?」
「俺たちの縄張りで好き勝手やってくれんじゃねぇの? 俺たちへの宣戦布告と見なすぜ?」
「ひ、ひぃぃぃ」
青年がそう凄むと、男は足早に退散していった。
俺はその様をジッと見ているのだった。
「ったく……歯ごたえの無い奴だぜ。 こんなんじゃ満足出来ねぇな」
頭をボリボリと掻きながら、青年が俺の方を向き、手を差し伸べてきた。
「立てるか?」
俺は頷き、青年の手を取らず、一人で立って見せた。
それを見て青年は苦笑しながら手を引き、口を開く。
「ま、無事なら何よりだ」
俺はキョトンとした顔で青年の顔を見る。
「ん? どうした? どっか痛むか?」
俺は首を振り、答えた。
「なんで、助けた?」
今、俺が居る場所『サテライト』では、『ゼロ・リバース』によって街、交通機関等が遮断され、荒れ果てており。
それでも生き残っている人々は、自分の事で頭がいっぱいで、他人を助けようなどとは思わない。
今まで俺が彷徨い歩いていた時も、さっきのような奴は多かったが、助けてくれる人なんて居やしなかった。
俺の問いに、青年は「なんだそんなことか」とでも言うように答えた。
更新日:2013-01-14 22:41:22