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~Side裕也~

「俺、
 木下が・・・好きです」

周りは
うるさいくらいのはずなのに

俺たちの間だけ
静まり返って、
時の流れが遅いように感じた。

『・・・・・・』

反応がない。

不思議に思って顔をのぞくと
たくさんの涙が、木下の頬を伝っていた。

「え・・・
 なんで泣いて・・・」
『・・・っ・・・』

対処に困ってると

震えた声の木下が

小さく、呟いた。

『・・・さい』
「え?」
『ごめん・・・なさい・・・!』

その言葉だけを残して

人ごみの中に、走りこんで行った。

「木下!」

見えなくなっていく木下に
精一杯、叫んだ。

ごめんなさいって
なんだよ。

なんで断った本人が
泣いたりなんか・・・

「あーもーくっそ・・・」

むしゃくしゃする。

木下の本心がわからない。
俺がバカだからか?


なあ木下。答えてよ。

お前の望みは
なんなんだ?

更新日:2013-01-19 12:02:12

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