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Mission1 小箱の大河にその身を委ねよ

廃頽した建物や風俗店、バーなどが建ち並ぶとあるスラム街の一角に、点滅して今にも切れかかりそうなネオンが付いた建物があった。
ネオンには『DevilMayCry』と書かれて他の店のネオンより不気味な雰囲気を漂わせていた。
ある人の話によれば、その店の店長は規格外の力を持っていると話す。またある人は、ここを便利屋と言ってバイクの修理やボディーガードなどの仕事を受け持つと言う。だが実際、この店の雰囲気と仕事の質は誰が見るからに違った。
そんな中、店に今ではその音が懐かしいであろう黒電話の音が鳴り響く。店の奥に置かれた机に足を掛けてだらりと座っている男が、受話器を手に持って耳に当てる。

「こちらDevilMayCry。」

明らかに声だけでイケメンだと思う人は大勢いるであろう。そのスーパーハリウッドに負けず劣らずの美声で女性に迫ったら、その女性は確実に虜になってしまうだろう。

「…チッ。」

すると男は舌打ちをして受話器を放り投げた。男は手を頭の後ろに組んで目を瞑った。明らかにその表情からは苛立ちのが出ていた

「合言葉なしの客はこれで何件目だ?」

DevilMayCry店長の『ダンテ』は机に置いてあるピザに手を伸ばす。ピザを掴んでこちらに引き寄せると、チーズが伸びて食欲をそそる。

「うめえが、この生活がいつまで続くか…。」

最近のDevilMayCryには合言葉を持たない客が沢山電話を掛けてくる。不景気の今、この店も波に乗ってしまったのだろう。最近では悪魔の出現もあまりない。あるとすればただのザコ程度だ。そしてまた黒電話の音が虚しく店に響く。ダンテ瞬時に受話器を取る。

「こちらDevilMayCry。…またか。」

先程の者とは違う声だった。しかも店名を述べた瞬間に依頼内容を言ってくるとは流石のダンテもこれには怒り電話を切ってしまった。

「たく…なんだあの客は?もう少し礼儀を知れ。」

ダンテはお気に入りのストロベリーサンデーに手を伸ばす。スプーンを持って甘さが抑えられたサンデーをスプーンで掬って口の前まで持ってきた時、また黒電話の音が鳴り響く。

「……。」

もしかしたらと思いダンテは受話器を取った。

「こちらDevilMayCry。……。」

ガチャッ。この反応は言うまでもない。受話器を投げてストロベリーサンデーにダンテはありつこうと…。

ジリリリリリリリリ…

「………。」

今日はこれで四度目だ。この電話がもし違ったら今日は店を閉めようと思い受話器を取った。

「…………!!」

なんと合言葉が合った。嬉しさの余り飛び起きたダンテは笑いながら電話の向こうの者と話す。

「…明日の午後一時でいいか?」

依頼者の了解も得て電話を切る。ダンテは少し嬉しそうにストロベリーサンデーを頬張る。ダンテ曰く、依頼が舞い込んできた時が達成した時より味が良いと言う。

「退屈しねぇ依頼だったら大歓迎だ!」

ここに一人で喜んでいる悪魔がいた。


この電話一本で世界が変わることも知らずに…。

更新日:2012-12-09 23:03:06

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