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初めて恋をした日 2

■ U-Know See

俺をじっと見つめる、かわいい目。
「おはようございます」
「おはよう」
「早かったね」
そういうと、君は。
ユノさんこそ。言って、幸せそうに笑う。

時間を守るって大事だって、思うから。・・・はい。
本当は、君に早く会いたくて、来たなんて。
言えない。・・・言いたいけど。
「行きましょう」
君に、見つめられながら、ちょっとくすぐったい気分で、歩く。

「あの・・・」
「ん?」
「今日、どのくらいお時間、いただけますか?」
いきなりそう聞かれて、答えに窮する。
「最初に、聞いておかないと・・・落ち着かなくて」
長いほうがいいのかな。短いほうが、いい?
今日は何も用がないから、君に決めてもらえばいい。

何時でもいい。言うと。
本当ですか? って、かわいい上目遣い。
役に立てるか、わかんないけど。俺の言葉に、笑って。

ああ、やっぱり、かわいくて。
どうしたらいいか、わからなくなる。
順番待ちの列で、得意な教科の話、して。
今日は何の勉強、する? 俺、わかるかな。
そんなふうに、たわいない会話。それだけでも、幸せで。

初めて付き合った彼女と、デートしたとき。
こんな気分だった。それより、もっと、ときめいてる。
勉強室へ行くのかと思ったら、君は。
3階の資料室に行くという。
なんでそんなところへ行くんだろう。わからないけど。
1階の親子連れ、2階の学生の群れを、抜けて。
3階へきたら。
本当に本が好きで、地元の友達同士で話したいご老人たちが、ひっそり集うような、ところだった。

いつも、ここで? ・・・はい。静かだし。
友達と来るときは、勉強室なんですけどね。

ここのほうが、静かだし、ちゃんと勉強できそうだから。
君が笑う。
こんな静かなところに、君とふたりでいたら。

何も、教えられないかもしれない。
君に、心を奪われて。


更新日:2012-12-20 20:36:08

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