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ハロウィーンの夜

10月31日。

それは僕達にとって特別な日。

だってお化けの僕達にとっては唯一、人間の世界に堂々と出てきても良いんだから。

人間の世界に住むキミはお化けが怖くてベッドの中に閉じこもっている。

ほら、僕の手に掴まって。そんなところに閉じこもってないで外に出てみようよ。

僕はふとそんなキミを見るとほっとけなくて手をさしのべた。

最初は震えていたけど、のちに警戒が解けて差し伸べた僕の手を握りしめた。

キミを連れ出し、外へ出ると黒猫が月夜の歌を歌う。コウモリ達が空を舞う。

怖がるキミに僕は手を握りしめ、優しく声をかける。


「大丈夫、怖くないよ。

大丈夫、心配しないで。

君を暗闇の中に置いて一人ぼっちにはさせないから」


僕の言葉を信じたキミはこくりと頷くとにっこりと笑った。

そして僕とキミは宙へ体をまかせるとハロウィーンの街へと足を運んだ。

そこは不気味でちょっと気持ち悪いものがいーっぱい。

ドロドロ、ネバネバ、ベチャベチャ。そんなものが街の窓から出てきているけど、

そしてそれを楽しそうに笑うキミだけど、まだ笑うのは早いよ。まだまだこんなんじゃないよ。

ほら、ちょっとこっちに来てみてよ。

そう僕はキミの手を引っ張り、キミが眺めていた蜘蛛のアートを通り越すと少し街の奥の方へと連れ出した。

何をするの?そう問いかけるキミに僕は人差し指を指しだした。

良いものを見せてあげる。だけどちょっとだけ目を瞑ってて。

僕が言うとキミは言うとおりに目を瞑った。

数分後に僕は目を開けてと言う。

キミが目を開けるとそこには一つの古い大きな袋。

首を傾げるキミに僕はこう言った。

これから僕とゲームをしよう。

どっちが多くお菓子を取れるか。

多く取った方が勝ちだよ?

僕が言うとキミはこくりと頷いた。

こうして、僕とキミのゲームが始まった。

家々に尋ねてはトリック・オア・トリートと言い、お菓子をもらう。

家の中の人はハロウィーンを楽しんでいるのか、魔女や吸血鬼の仮装をしていた。

ちょっと怖いけど、お菓子のためなら、僕に勝つならばとキミは勇気をだしてトリック・オア・トリートと言ったね。

そしてハロウィーンがもうすぐ終わる時、キミは袋が入りきれない程のお菓子をもってさっきいた場所へと戻ったね。

キミは僕が負けて悔しがる顔が早く見たくて待っていたけれど、

僕はキミのところへは行かなかった。

何故って?・・・・・もうハロウィーンは終わっていたから。

僕はお化けだ。この世に存在しない。

ハロウィーンが終われば僕も消える。

そう。じつはこれ、お化けの僕のイタズラだったんだ。

今まで外の世界が怖くて、一歩も足を踏み入れなかったキミを外の世界に連れ出す、最高で最大のイタズラ。

泣かないで。またハロウィーンの日に遊びに行くから。

聞こえないと思うけど、僕は泣いているキミの耳元で冷たい風となり、そう囁いた。

今度はお菓子、ちゃんと用意してよね?

更新日:2012-10-27 17:28:18

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