『せんせー、ノート持ってきましたー』
「あら、ありがとう」

今日、あたしは日直。
提出するノートを集めたものを、職員室に持ってきた。

『じゃ、失礼しま・・・』
「あ、そうだ西野さん。ちょうど頼みたいことがあったんだ」

帰ろうとしたあたしの足が、止まる。

『え？』
「今日休みの人に、プリント類届けてほしいんだけど」
『・・・』

さて、思い出そう。
朝出席をとったときの先生の言葉。

（今日の欠席は・・・本田くんだけね）

お休みは本田。
お休みの人に会わなきゃいけないのは、あたし。
＝本田に会わなければいけない。

・・・はぁぁぁぁあ？！

『いやいや！てゆかなんであたしなんですか！
　クラスには何十人も人がいるのに！！』

行かなくてすむ理由を、必死であげた。

けどやっぱり、無駄なあがき。

「西野さんが一番、本田くんの家に近いの。じゃあ、頼みましたね」

それだけ言い残して、職員室に戻ってしまった。

『嘘・・・でしょ・・・』

ガクッと肩を落とすあたしに残されたのは、
本田宛てのプリントのみ。

それだけが、ただ、風と共に揺れていた。