しかしこのあたりから私の人生にも影がさしてきました。

どんなにエステに通い、ブランドの服を身につけ、若作りをしてもどうしようもない老いが迫ってきているのを感じずにはいられません。
昔は道を歩いていると、必ずといっていいぐらい男性がふりかえって見たものでした。
それがどうでしょう。
今ではもうだれも見向きもしてくれません。
擦り寄ってくるのは、飼い猫のルルちゃんぐらいのものです。

「ルルちゃ～ん、おまえだけだね。おいでおいで」
と言って、実は嫌がるルルを追いかけて抱きしめるのです。

悪いことは続くものです。
32才でヘッドハンティングされ、外資系の企業で20年間以上も勤め上げた私にリストラの波が押し寄せてきました。

「新庄さん、申し訳ないが・・・・」
上司は苦虫をかみつぶしたような顔で言います。
呼ばれたときから覚悟をしていましたので、別に驚きはしません。
ただただ、あんなに信頼していた上司に宣告されたときは、絞め殺してやろうかと思ったものです。
つまり私は彼の過去の不倫相手だったのです。

55才にして早期退職いたしました。
最後の日は同じ部署の人たちがそれぞれ花束をくれて、私が去る姿をエレベーターまで見送ってくれました。
20人ほどいたでしょうか。

「新庄さん、長い間ご苦労さまでした」
「新庄さんにはたくさんのことを教えていただきました。決して忘れません」
涙ぐむ若い女の子もおりました。