「新庄さんのドレス素敵!　どちらのもの? 」
真剣な顔で私の服の生地の手触りを確かめます。
もちろんブランドものなので、質感はそこらに吊られているものとは違います。

「メイクや髪型もいいわねえ。やっぱり働いている人はおしゃれの感覚が違うのね」
もちろん一般の女が入るにはちょっと気後れする美容院のカリスマ美容師にやってもらうのです。

歯の浮くような世辞を言う彼女たちの内心は、「結婚もできないで気の毒に」と思っているのは、私もバカではないので承知しております。
それでも独身であることで、逆に私の方が彼女たちに優越感を持っているのは事実なのです。

わたしは自分で言うのもなんですが、がんばってまいりました。
働く意思のない周りの同級生たちを尻目に、大学3年生からの就職活動。
やっと決まった大手菓子メーカー。
あれから1度転職をし、現在は外資系企業で課長として働いております。
年俸制なのでボーナスこそ出ませんが、毎月の給料は80万円程度。
同年齢の男性には負けておりません。

そして“自分の収入は自分のために使う”がモットーでもあります。
おかげで35才のときに3LDKのマンションを購入することができました。

この年になると付き合う男性は妻子持ちばかりになってしまいます。
仕事もバリバリやっておりましたし、人からは少々自信過剰に見えたかもしれませんが、実際のところはっきり言って“怖いものなし”の毎日でした。

まだまだ女としての魅力は十分あったので、言い寄ってくる男もひとりやふたりではありません。
しかし、ほとんどの男性はハゲかデブの小汚いオッサンばかりで、恋愛の対象にもなりません。
中にはステキな人もいましたが、そんな人にかぎって愛妻家が多く、結局ただの遊びで終わってしまうのです。
まあ、こちらも結婚を望むわけではないので、お互いギブアンドテイクといったところでしょうか。

その点では望みどおりの人生といっても過言ではないと思います。