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挿絵 646*421

「ママ、ママ~」
だれかがわたしの肩を揺り動かしています。

うっすら目を開けると、ぼやけた輪郭が見えました。

「・・・・あ・・・・さおり・・・・」

「もうママったら、またへんな妄想していたんでしょ。カレが来たんだからあ。こんなとこで目開けて寝ないでよね」

「チワーッス」

浮浪児のような汚い頭に、ピアス、今にも汁がしたたり落ちそうなジーンズからはパンツが見えています。
別に悪びれる様子もなく、堂々とリビングを通り過ぎる娘の彼。
すれ違う瞬間、私は目の前の空気を両手で拡散させるのです。

「あ、さおりい、パパは?」

「もうママったら、ゆうべから戻ってないでしょ。また女のところじゃないの?」

そうだった。
だんだん意識がはっきりし、記憶がよみがえってきました。

と、その時電話のベルが・・・・

「ああ、そちら新庄さんですか? こちら今宮警察ですが。お宅のおばあちゃんのことで、ちょっとお話をお伺いしたいのですが、イズミスーパーまでお越しいただけませんか」

「あの、うちのおばあちゃんがなにか・・・」

「万引きをされましてね。タラコとこんぶの煮付け。あとチョコレートですかな。ああ、お名前を聞いても分からないの一点張りで、店長さんから警察に連絡をいただきましてね。パートの女性がおばあちゃんの名前をご存知だったので、電話番号を調べさせてもらいました」

「すぐに行きます」

よっこらしょと、ソファから立ち上がります。

こんな家族、ない方がいいのか、それともこんな家族でもないよりある方がいいのか私には分かりません。
きっと死ぬときにその答えが出るのでしょう。
でも、ボケているから分からないのかもしれませんね。

更新日:2009-02-08 10:32:29

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