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私70歳代

70歳代の同窓会はさみしいものでございます。
夫が亡くなり、未亡人になった人もたくさんおります。
でも彼女たちはまだまだ元気。
これからもう一花、ふた花咲かせようという勢いがございます。
問題は同級生の死。
病気で苦しんだ人の話を聞くたびに、いっそのことポックリと逝ってしまいたいと思う今日この頃です。

最近、遠い昔のことはよく覚えているのに、昨日のことや、1時間前のことを忘れてしまっているようです。

「新庄さん、また同じ話をしてるわ」
若いお嬢さんが「あ~ん」と言って口元に食べ物を運んでくれます。
そのお嬢さん「はい、お手々出して」とか「お顔ふきましょうね」とか、小さな子どもに言うように私に言うんです。
本当に腹立たしいかぎりです。
やさしいお嬢さんですが、時々私の手をたたくこともあります。
「きたない! だめって言ったでしょ!」
ピシャ!!とやられた日にゃ、私やり返してやるんです。
手につかんだやわらかいものを、相手めがけて放り投げ、手に残ったそれを壁にこすりつけたりもします。
するとお嬢さんは発狂したように「キャ~」と叫んで逃げて行ってしまいます。

「施設長さ~ん、新庄さんのおばあちゃんのお世話リタイアさせてください。お身内の方いらっしゃらないんですかぁ?」

たぶんここの一番偉い人であろう男性があごをさすりながら私を見ています。
「う~ん、あの人一度も結婚していなくて、子どももいないんだよね。お兄さんがいらっしゃったが、もうご高齢なのでね」

「なんで結婚しなかったんだろう。一生独身って、さみしいですよねえ」

私はなんだかむしゃくしゃしてきて、その場で立ったままやってやりました。
これがまた気持ちいいのでございます。
私はあまりの気持ちよさで、その場に倒れこんでしまいました。

「キャ~!! 新庄さん、新庄さ~ん!!」

更新日:2009-02-08 15:07:23

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