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あたりは薄明るく、白い霞に包まれていた。
他には何も見えない。
ティジットは霞に消えかかる人影を追いかけていた。
「待ってください!」
何も無い空に何度も手を伸ばす。
あわや消えうせそうな、そんな緊張感を味わいながら、やっとのことで捕まえる。
「ああ……」
後ろからしっかりと、けれど優しく抱きとめた華奢な柔肌の感触に、ティジットは溶かされて深いため息を漏らす。
亜麻色の細く長い髪がティジットの腕をくすぐった。
「イーシュ……」
追いかけていたのはイーシュだった。
ティジットはゆっくりと、黙って動かない少女をこちらに向かせた。
長いまつげで伏せらた瞳。
ティジットはそっと、花にでも触れるように優しく、頬を染めうつむいたままのイーシュの顎に手をかけた。
「……イーシュ、あなたの瞳の色をどうか見せてください……」
それに応え、イーシュはゆっくりと顔を上げ、まぶたを開いた。
他には何も見えない。
ティジットは霞に消えかかる人影を追いかけていた。
「待ってください!」
何も無い空に何度も手を伸ばす。
あわや消えうせそうな、そんな緊張感を味わいながら、やっとのことで捕まえる。
「ああ……」
後ろからしっかりと、けれど優しく抱きとめた華奢な柔肌の感触に、ティジットは溶かされて深いため息を漏らす。
亜麻色の細く長い髪がティジットの腕をくすぐった。
「イーシュ……」
追いかけていたのはイーシュだった。
ティジットはゆっくりと、黙って動かない少女をこちらに向かせた。
長いまつげで伏せらた瞳。
ティジットはそっと、花にでも触れるように優しく、頬を染めうつむいたままのイーシュの顎に手をかけた。
「……イーシュ、あなたの瞳の色をどうか見せてください……」
それに応え、イーシュはゆっくりと顔を上げ、まぶたを開いた。
更新日:2013-08-03 21:22:12