神事が滞りなく過ぎた後日、人々の話題は精霊のような少女のことで持ちきりだった。

　神官以外は誰も、やはり、名前はおろか顔すら見たことがなかったらしい。
　そして、館の男の多くが少女に興味を抱き、恋に落ちたらしかった。
　普段はがらがらの礼拝堂が、精霊祭の後からは、信仰とはほど遠かったはずの男たちで賑わうようになったのだ。

　少女は舞手の巫女ではあるが、日常では他の神官同様らしい。
　神殿で粛々と奉公をする姿に男たちが熱い視線を送るが、少女のほうはまるでその視線の意味を理解せず、いつも軽く会釈をして、すぐにすり抜けた。
　その纏った純白の法衣の色のような清らかさに、俗世に穢れた男たちはますます心を奪われていった。