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 決戦から半月後、エイクが兵を率いて館に帰還するという知らせが、館に届いた。

 戦場は締められた。

 双方、訳が分からぬままに。

 この戦に勝者はない。

 夜半の月を頼りに、その場でひとまずの講和条約が結ばれ、一時的に互いに不可侵を約束しあった。

 調印したのはエイクだ。

 相手は皇子も将軍も不在で、軍師でもある皇子の脇待が出た。

 その知らせは、もちろん奥方にも届いている。

 納得いかない不機嫌な顔をして、執務室の陽だまりに佇むことが多くなった。

 傍に、イーシュはいない。

 侍女も下がらせて、部屋に独り籠もり、面倒そうに自ら淹れた紅茶に奥方は口をつける。

 戦に関する執務が無い以上、それがただひとつの日課となっていた。





更新日:2012-11-10 11:47:56

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