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story 10 ずっと

- YUI side -


「・・・どうした?」


あの日みたいな冷たい態度じゃなかったから
少し安心した。

あれからずっと学校に行けずにいた。
会うのが怖かったから。
春人と麗奈さんが一緒にいるところを見たくなかったから。
想像するだけで苦しくなって恋の辛さを実感した。


「長くなるけど、いい?」

「・・・いいよ。」


春人の優しい声。
あれからずっと聞いていなかったから
なんだか懐かしい。


「あたし・・・恋をしたことがなかったから
 春人に告白されたときどうすればいいのか分かんなかった。
 だけど、一生懸命話してくれるのを見て
 この人を好きになりたいって思ったの。」


一緒にいると楽しくて
春人が笑ってくれるとあたしまで嬉しくなった。
傍にいてくれる人がいることがどれだけ幸せかを知った。


「でもずっと分かんなくて。
 春人は想ってくれてるのに
 それを返せない自分が情けなかった。」


・・・泣きそう。
あの時のどうしようもない感情を思い出してしまって。
悔しい。
春人の前では
何があっても笑っていようって決めてたのにな。


「春人に別れようって言われたとき
 悲しくて仕方がなかった。
 ・・・なんでもっと早く気付かなかったんだろうって
 あたし・・・ちゃんと恋できてたの・・・」


毎日、君のことばっかり考えて
それが当たり前すぎたんだ。
別れてからも
一瞬だって春人のこと忘れたことはないよ。


「唯・・・」


春人はそれだけ言って
あたしを抱き締めてくれた。
いつだってこの優しい腕の中に戻りたかった。
幸せだよ、春人。


「俺・・・唯のこと必死に忘れようとしたけど
 でもそんなの最初から無理だったんだ。
 諦められるわけなかった。
 いつもお前が頭から離れなかった。」


そんな言葉をかけられて
また涙があふれた。

「麗奈さんに言われたの・・・」

「麗奈・・・?」

「春人を笑顔にできるのはあんたしかいないんだって。」

更新日:2012-12-03 20:31:23

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