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第7話「純也の真実」

屋上を飛び出したあたしは、階段下に座り込んでいた。

『・・・あたし、最低・・・』

恋をするかしないかなんて、佐々木くんが決めることじゃん。
なのにあたしの意見押し付けて、バカみたい。

『・・・謝らなきゃ』

気まずいけど、悩むより先に進まなきゃ。

もう一度階段をのぼって、屋上のドアのぶに手をかける。

「俺の親さ、小さい頃に離婚っしたんだ」

ドアの向こうから聞こえた、佐々木くんの声。
・・・離婚?

「え・・・」
「俺、両親大好きでさ。ずっと大事にしてくれて。なのに母さんいなくなって・・・しかも父親、その直後に事故で死んだ」
「・・・嘘だろ?」
「本当だよ。そんで、あー俺、一人ぼっちなんじゃんって思ったら悲しい通り越して何がなんだかわかんなくなってきちゃって、涙も出なかった」
「それで・・・恋しないって?」
「それだけじゃないよ。その後俺、親戚の家にもらわれたんだけどさ。なんか結構邪魔者だったみたいで。結局施設に預けられた。施設にいる間は結構幸せで、仲のいい友達も先生もたくさんいて。どーせもらわれることなんてないだろうと思ってた。そしたら、この幸せがずっと続くって。でも・・・俺がどれだけそこにいたって、周りの子たちはどんどんいなくなっていった。それ以来、施設の中でも誰とも関わろうとしなくなった。どうせいつかは、離れていく。それなら、もう誰とも仲良くなんてしない。そしたら、傷つかなくてすむって。・・・それからかな、あんまり自分の本当の心を見せなくなったのは」

立ってるのが、やっとだった。
佐々木くんの過去を知れば知るほど、自分まで苦しくなってきて。
そんな佐々木くんに、あたしは・・・
最低な言葉をぶつけた。

「で、施設に入って4年ぐらい経ったとき・・・俺を養子にもらいたいって人が現れた。その人たちは、俺の親と同じぐらい大事にしてくれたよ。たまに過保護じゃんって思うときもあったけど、それぐらい大切にしてくれた。その頃だよ、俊也と同じサッカーチームになったのは。それで学校でもさ、友達を作ろうとしない俺にいつも優しく笑ってくれた樹理って子がいて。俺その子に、恋したんだ。すごい幸せだった。なのにやっぱり、続いてはくれなくて。樹理は、転校したよ。それで落ち込んでたけど、またいつか会えるって信じて、唯一の居場所の家族がいてくれたから、立ち直れた」

“樹理”
それが、キミが心を許した初めての子。
なんだか、うらやましい。

「じゃあなんで・・・」
「でもさ、唯一の居場所さえ、なくなっちゃったんだよ」
「え・・・?」

・・・まさか・・・
もしかして・・・また・・・。

「死んだんだ。養子に入った家の家族も。理由は・・・忘れたけどさ。死んだって知った瞬間、俺意識失って。その時の記憶はまるまる、消えたんだ。ショックが大きすぎたんだと思う」
「・・・」
「俺、怖いんだ。大事な人ができたら、またどこかへ行っちゃうんじゃないかって。もう嫌なんだよ・・・大切な人が、次から次へと消えていくのは・・・!」
「純也・・・」
「おかしいでしょ、俺が好きになった人はみんな、いなくなってる。だから・・・上村さんもきっとそうだって思ったら・・・好きだけど、好きだからこそ、そばにはいてほしくない。大事な子だからこそ、俺のそばにはいないで・・・ずっと、見つめてるだけでいいって。だから告白されても、なんの返事もできなかった。そのせいで傷つけて・・・バカだよな」

なにそれ。
じゃあ佐々木くん・・・あたしのこと、好きなの?
・・・もう、見てるだけなんてやだ!

バンッ
あたしは、思い切りドアを開けた。

「・・・上村さん」

今度はちゃんと
受け止めてください、あたしの気持ち。

更新日:2012-10-13 15:47:15

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